記憶に残るボス戦、魅力的な戦闘、そしてあふれんばかりの外連味『Phantom Blade Zero』は、モバイルゲームで知られるスタジオの作品ということもあり、ここ数年、あまりにも出来すぎているように見えるタイトルだった。だからこそ、50時間にわたって絵に描いたようなカンフーを繰り広げたあとも、見た目どおりに遊んでいて楽しいと言えることは、私が本作に贈れる最大級の賛辞だ。驚くほど滑らかなこのアクションゲームには、近年プレイしたなかでも屈指の満足感があり、絶妙に調整された戦闘が楽しめる。美しい各ステージには、発見すべき秘密や達成すべきクエストが驚くほど多く用意されているうえ、信じられないほど最高の瞬間に満ちた、巧みな戦闘も尽きることなく続く。複雑でわかりにくいストーリーや時折発生するパフォーマンス上の問題など、欠点もある。しかし、驚異的なアクションをはじめ、それ以外のほぼすべてが見事な出来栄えであり、武林の者たちを斬り伏せながら進むことに心から胸を躍らせられなかった瞬間は、ほんのわずかだった。 『Phantom Blade Zero』のプレイ感覚は、まるで武侠大作の世界に飛び込んだかのようだ。プレイヤーは、復讐を果たすまでに残された命がわずか66日という、謎めいた出自をもつ最高にイカした武術家となり、荒廃した「影界」を巡る壮大な旅に出る。道中では、ありとあらゆる怪物や手強い猛者たちが立ちはだかる。ただ、本作のストーリーは強みとは言いがたい。あれもこれも盛り込みすぎており、神秘的な専門用語を大量に詰め込み、何十人もの登場人物を出し、必要以上に複雑な時系列まで用意している。その大半は結局、ストーリーにほとんど活かされない。最初の2時間だけでも、現在、数年前、数カ月前、数日前のあいだを何度も行き来する展開にあまりにも多くの時間が割かれ、最初の本格的なボス戦に挑む前から、状況説明の多さにすっかり疲れてしまった。とはいえ、道中には好感のもてるキャラクターも十分にいる。なかでも、「魂(こん)」という名の動じない主人公がいるおかげで、不要な回想や長々とした説明で時折こちらの時間を無駄にされても、たいていは大目に見ることができた。 さらに、プレイヤーは世界を探索し、大小さまざまな敵と渡り合うことにプレイ時間の大半を費やす。そして、本作が冒険のなかでもこの部分にこそ意識を向けさせようとしているのは明らかだ。それは喜ばしいことでもある。なにしろ、この部分の出来はとてつもなく素晴らしいのだから。精密なパリィや回避の操作は、ほんの数分で自然に感じられるようになった。武器、コンボ、特殊能力、強化要素を備えたシステムは、奥深くも複雑すぎず、非常に巧妙なペースで順次導入されていく。そのどれもが、まるで自分にぴったり仕立てられた流麗な武侠装束に袖を通すように、すんなりと身になじむ。私はこの手のゲームの戦闘の手触りやテンポにはかなりうるさいほうだが、本作の戦闘はすぐに旧友と再会したようにしっくり感じられ、たちまち夢中になった。こうした感覚的な部分は、うまく仕上げるのが非常に難しいものでもある。 さらに印象的なのは、戦闘の手応えが最初からよいだけでなく、それぞれ固有の技構成をもつ数十種類もの武器すべてで、そのよさが感じられることだ。本作では、武器の装備構成を定期的に変えるよう促されるだけでなく、実際に使い分ける必要がある。使用中の近接武器をボタンひとつで切り替えることが、殺気ゲージを回復する手段のひとつだからだ。多くの敵、とりわけボスは特定の攻撃で殺気ゲージを一気に削ってくる。そのため武器を頻繁に切り替えることになり、複数の技構成や特殊能力を覚えなければならない。都合のいいことに、『Phantom Blade Zero』では、武器のレベル上げに振り分けたポイントを元に戻して再投入するのが非常に簡単だ。そのため、ひとつの武器の組み合わせに固執する理由はほとんどない。そもそも、その武器が役立つエリアに入る直前やボスと遭遇する直前には、なぜかいつも必要な道具が見つかるようになっているようだ。たとえば筆者は、炎属性のボスへと続くエリアからほんの数歩しか離れていない場所で、ウォーターキャノンの武器を見つけた。実に気が利いている。 戦闘の手応えが最初からよいだけでなく、それぞれ固有の技構成をもつ数十種類もの武器すべてで、そのよさが感じられる さらに、グラップリングフックや弓といった追加の道具も数多く解放される。これらは戦闘中だけでなく、それ以外の場面でも役に立つ。マップ上の特定の場所へ到達したり、通常なら通り抜けられない障壁を突破したりするのに使えるからだ。体力が満タンのときに与えるダメージが大幅に増えるなど、興味深い強化効果をもたらすアクセサリーもある。スキルツリーには、空中で回避できるようになったり、持ち運べる回復アイテムの数が増えたりするパークも用意されている。強化できる要素には驚くほどの奥深さがあり、武林の戦士である主人公の戦い方を細かくカスタマイズする手段も豊富だ。そのため筆者は、この手のゲームで普段よりずっと長い時間を、さまざまな武器を試したり装備を入れ替えたりすることに費やした。少なくとも、ザコ敵にとどめを刺す際の固有の処刑演出を見るだけでも、装備を試す価値がある。 用意された8つのマップを歩き回るなかで、前述の道具をすべて試す時間もたっぷりある。どのマップにも、倒すべき敵、達成すべきサイドクエスト、回収できる宝箱、そして発見すべき秘密に満ちている。訪れる場所や出会う人物のうち、気づかないまま見逃してしまうものが驚くほど多い。金色の仮面をつけた謎の男として登場するドニー・イェン本人から修行を受ける、非常にクールな一連のクエストを見逃すことさえある(この連続したクエストは、実のところ、本作屈指のサブストーリーだ)。サイドクエストの大半は、ちょっとした報酬のためにどこかへ行って何かを集めるという、かなり単純な内容だ。それでも、マップの隅々まで探索する動機が増え、私も喜んでそうした。画面にアイコンがあふれ、行き先ややるべきことを正確に指示する最近の多くのゲームとは違い、本作では手描きの地図が使われている。地図からわかるのは、主要な目印との位置関係から見たおおよその現在地だけで、あとは自分で探索し、地図の空白を埋めていく。 この旅で、つねに足を引っ張るものがひとつあるとすれば、本作の地形の作りや当たり判定にかなり問題があることだ。主人公は地形やオブジェクトにしょっちゅう引っかかり、道のほんの小さな段差にさえ、ぴたりと足を止められてしまう。19回も宙返りしながら空中を10m以上も跳べる男にしては、実に滑稽な話だ。それだけでなく、あちこちに見えない境界があり、探索がぎこちなくなることもある。とりわけ、足場を飛び移って進む場面である足場へ向かおうとしたところ、見えない壁に阻まれて、そのまま落下死することがあった。プレイ中に200回近く死亡したが、そのおよそ半数は、穴に落ちたか、地形に引っかかって身動きが取れなくなったことによるものだった。引っかかった場合は、自滅するかセーブデータをロードし直すしかない。あるときなど、武術の達人のはずの主人公が茂みから抜け出せず、20分ほどの進行を失ったこともある。敵が地形に引っかかることもあり、そうなると戦闘はひどく興ざめだ。 それでも、『Phantom Blade Zero』の真骨頂――本作が何度となく披露する魔法のような離れ業――は、神のごとき怪物たちとの戦いで襲いかかる常軌を逸した剣戟の嵐を、何事もないかのように受け切れるのは世界で自分だけだと思わせてくれるところにある。実際、近接戦の攻防は非常に緻密に調整されている。どの攻撃にも、反応に必要な時間をちょうど与えてくれる予兆があり、ほとんど意識できないほどの音楽的なリズムも、次に何が起こるかをある程度先読みする助けになっている。そのテンポに同調できるようになると、攻撃を意識して認識するより先に予測できるようになり、初めて見た電光石火の攻撃を完璧に防ぐことさえあった。私の反応速度やアクションゲームの腕前が特別に優れているわけではない。むしろこれは、信じられないほどしびれる戦闘がいかに絶妙なバランスと巧みな設計で成り立っているかの証だ。間違いなく、これこそ本作がもっとも得意とするところであり、私はオープニングから最終決戦まで、その錯覚に何度もまんまと乗せられた。 終始、最高難易度でプレイしたが、つねに絶妙な手応えが感じられた 難易度について私が感心するのは、つねに絶妙な手応えが感じられることだ。理不尽なほど容赦ないわけではないが、ボコボコにされる危険がないと感じさせることもめったにない。私は普段からこの手のゲームの歯応えある挑戦を好むため、『Phantom Blade Zero』も終始、(選べるもののうちの)最高難易度でプレイした。しかし、主要なボスのほとんどを2〜3回の挑戦で倒すことができ、初挑戦で撃破したボスもかなりいた。それでも、まったく不満はなかった! また、ボスのもつ攻撃手段のすべてを見極める前に倒すことがほとんどだった。しかも、ボスを恐れる側ではなく、ボスに恐れられる側になったように感じられるのが新鮮だった。部屋に入り、腹筋が8つに割れた3mほどの背丈の猛者が刃を振り回しているのを見て、「ああ、こいつは俺に倒されるんだな」と思えるのは、実にクールだ。 絶妙な難易度を支える工夫のひとつが、ボス戦ですでに突破した形態はやり直しをさせないという興味深い判断だ。敵を怒らせるだけの第1形態を突破したあと、さらに筋骨隆々の狂人へと変貌した敵に倒されても、第2形態の冒頭から再戦できる。私は、より手ごわいパートに再挑戦するためだけに、ボス戦の第1形態を10回以上もやり直さなければならないと、ついいらだってしまうことがある。最近では、複数形態のボス戦全般にうんざりしがちなほどだ。このわずらわしさを完全になくしたことで、本作はこうした戦闘で生じかねないストレスを大きく減らしている。 この仕組みのおかげで、ボス戦の設計にも幅が生まれている。たとえば、ボスが卑怯な技を繰り出し、食らえば即死するような場面だ。普段なら、こうした即死技があるだけで私は激怒するところだが、進行状況を腹が立つほど大きく巻き戻されることはほとんどなかったため、この手の攻撃にもずっと寛容になれた。考えてみれば、巨大な槍に串刺しにされ、火をつけられたうえ、顔面から床に叩きつけられるようなとんでもない攻撃なら、即死しても不思議ではない。そんな壊滅的な一撃を、いらだたしいものではなく興奮を呼ぶものに仕立てているのは、実に見事だ。 エンディングを見るまでにかかった50時間、何十体ものボスと戦うなかで、本作が次々と繰り出す独創的な敵には終始驚かされ続けた。これもまた、驚くほど見事な点だ。たしかに、「大斧を持った大男」や「前にも戦ったはずと思わせる剣士」が現れることもときにはある。だが、そうした敵はあくまで例外で、全体がそうなっているわけではない。ある場面では獅子舞の面をかぶったボスが、火炎攻撃を強化するために柱の上を飛び回りながらレタスを集めていた。また別の場面では、ひとつの部隊のように連携し、途方もなく入り組んだ攻撃を仕掛けてくる戦士たちと戦った。そこで命を脅かす最大の要因は、敵の攻撃ではなく、笑いすぎて油断してしまうことだった。ボス戦はどれも一貫して興味深く、記憶に残るうえ、数も多い。そのため、ひとつ残らず探し出したいという気持ちに駆られ、取り逃しがないよう、初回プレイで完全制覇を目指すやり込みプレイに変えた。 1カ月あまり前に『Phantom Blade Zero』をプレビューした際、私が主に懸念していたのはパフォーマンスのことだった。ありがたいことに、今回のレビュー用にプレイしたバージョンは、はるかに安定して動作していた。フレームレートもずっと安定しており、戦闘中に問題に気づいたのは、覚えている限りほんの数回だけだった。とはいえ、特定のマップではフレームレートが終始かなりひどかった。とりわけ、何かが正常に機能していないように見える一角では顕著だった。比較的簡単に原因を特定して修正できそうな問題なので、発売時かその直後にパッチが配信されなければ驚きだ。ただ、ほかにも未解消の問題が潜んでいるのではないかと思うため、この点は指摘しておきたい。
つづき『Phantom Blade Zero』レビュー 記憶に残るボス戦、魅力的な戦闘、そしてあふれんばかりの外連味を備えた、驚くほど滑らかなアクションゲーム
投稿日時: 2026年10月26日 18時00分頃
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