『ファイアーエムブレム 万紫千紅』レビュー、これは「ファイアーエムブレム」の満漢全席!

シリーズの可能性を過剰なまでに追求した、巨大でいびつな集大成『ファイアーエムブレム 万紫千紅』は、これまでのシリーズが培ってきた要素をあますところなく取り入れた、いわば「ファイアーエムブレム」の満漢全席とでもいうべき集大成である。 手強いマップを攻略するシミュレーションRPGとしての伝統はもちろん、自由行動、仲間のスカウト、支援会話、ワールドマップの探索、ダンジョン、拠点での交流、複数部隊の運用、街の復興に至るまで、盛り込まれた要素はあまりに多い。物語、世界設定、育成、戦闘のすべてが巨大であり、シリーズ史上でも例を見ない規模の作品となっている。 その結果として、システムは非常に複雑だ。プレイヤーが管理すべきものは、日数、行動回数、やる気、支援値、名声レベル、お金、各種素材、部隊の位置、街の復興状況など多岐にわたる。ゲーム側から提示される情報も必ずしも十分とはいえず、何を優先すべきなのか分からないまま、広大なワールドマップを前に途方に暮れることもある。 一方、練りに練られた育成要素と、ギミックに富んだ高難度マップの完成度は、シリーズ最高峰と評価してよい。とりわけ後半の戦闘では、単に強い敵を倒すだけではなく、限られた戦術的リソースを投入し、敵軍の連携を崩し、戦場全体を掌握していく必要がある。苦闘の末に勝機をつかんだときの達成感は、まさしく「ファイアーエムブレム」でしか味わえないものだ。 本作をシリーズ初体験の人に薦めるのは難しい。初心者向けの救済手段は豊富だが、それらを有効に使うためにも、まず膨大なシステムを理解しなければならないからだ。しかし、長年シリーズを遊んできたファンにとって、これほど豪華な料理はほかにないだろう。 本作は大きく三部に分かれている。それぞれの英雄の過去をたどる第一部「四人の戦士編」、大陸規模の戦乱として描く第二部「戦争編」、そして、それまでに仲間にしたユニットを結集してプレイヤーの分身たる救世主とともに最後の戦いへ挑む第三部「救世編」である。 しかも、この三部は物語上の区切りにとどまらず、ゲームプレイの構造そのものが異なる。本稿では、この三部それぞれの特徴を追いながら、本作がどのように「ファイアーエムブレム」の歴史を一作へ集約しているのかを見ていきたい。 あらかじめ、筆者がプレイした条件を提示しておくならば、筆者は難易度ノーマルで、ユニットのロストが発生するクラシックモードでプレイした。さらに加護と呼ばれる機能で使用できるターンの巻き戻しは封印し、全員生還でのクリアを達成した。このような縛りは何も個人的なものではなく、「ファイアーエムブレム」ファンであれば、多くの人が選択する要素だと思うが、難易度がかなり跳ね上がることは間違いない。しかしながら、そのようなプレイで得られる興奮は唯一無二のものであったことは確かだ。 後日談から始まる大胆な物語 本作の物語は、すべての戦いが終わったかに見える「後日談」からプレイヤーの分身たる救世主の戦いとともに始まる。この後日談がチュートリアルを兼ねており、救世主は「方尖塔の間」と呼ばれる場所へたどり着く。そして、四人の英雄の過去へ干渉し、本来とは異なる運命へ導くことになる。 チュートリアルでは救世主の簡単なキャラクターメイキングがある 最初に結末の一端を提示し、そこから過去へさかのぼる構成は大胆だ。プレイヤーがこれから体験するのは、単なる4人の英雄譚ではない。彼らがなぜ英雄と呼ばれ、どのような悲劇や選択を経て、後の大戦へ巻き込まれていったのかを再構築する物語である。 4人の物語は、好きな主人公から始められる。筆者は「ダグザの異邦人」ことディートリヒを最初に選んだが、自由行動が解禁された後は、途中から別の主人公の章を進めることも可能だ。 ただし、複数の主人公を並行して進める仕組みには難点もある。新しい主人公を始めるたび、似たような序盤のゲームプレイを繰り返すことになり、やや面倒に感じる。もっとも、各主人公はワールドマップ上で行える活動が異なるため、完全な反復にはなっていない。 4人それぞれの生活、文化、戦い方を通して大陸を異なる角度から眺める構成は、本作の膨大な世界設定を理解するうえでも有効に機能している。

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ファイアーエムブレム 万紫千紅 -Switch2

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