泥棒をサンダルで殴りながら目指せ億万長者。『Comic Book Store Simulator』はオタクの妄想とカオスが詰まった怪作経営シムだった #comicbookstoresimulator

皆さんは「自分だけの最強の本屋を作りたい」と夢見たことはないだろうか。 壁一面に好きな漫画を並べ、同志たちが集う聖域を作る。そんな甘美な夢を叶えてくれるのが、Akhir Pekan Studioが送る『Comic Book Store Simulator』だ。

一見すると、最近流行りの「スーパーマーケットシミュレーター」の亜種に見えるかもしれない。しかし、実際にプレイしてみると、そこには単なるレジ打ち作業ゲーには収まらない、独特のユーモアとカオス、そして妙な愛着が湧く世界が広がっていた。

没入感がすごい、オタクによるオタクのための品揃え

本作の基本ループは非常にオーソドックスだ。商品を仕入れ、棚に並べ、価格を設定し、客に売る。しかし、扱う商品が「野菜」や「洗剤」ではなく、「コミック」であるという点が、我々のコレクター魂を激しく揺さぶる。

仕入れリストを見てニヤリとしてしまった。「Nafuton(ナフトン)」や「One Peace」など、どこかで見たような、いや、ギリギリ怒られないラインを攻めたパロディタイトルが300種類以上も並んでいるのだ。日本のマンガ、韓国のウェブトゥーン(マンファ)、アメコミとカテゴリ分けされているのも芸が細かい。

最初のうちは資金繰りに苦労する。段ボールから一冊ずつ本を取り出し、棚の隙間を埋めていく作業は地味だが、徐々に棚が埋まり、極彩色の背表紙が並ぶ光景には謎の達成感がある。自分の店が「オタクの楽園」に近づいていく過程は、このジャンル特有の「時間泥棒」な中毒性を持っている。

経営者はつらいよ。サンダル片手に治安維持

このゲームが他のシミュレーターと一線を画すのは、その「治安の悪さ」と「物語性」だ。 平穏にレジ打ちをしていると、店内に不審者が現れる。万引き犯だ。ここで我々店長が取るべき行動は、警察を呼ぶことではない。「サンダルで殴る」ことだ。

なぜか武器として支給されるサンダルを振り回し、泥棒を撃退する。時には店の前でリアルファイトが勃発し、客足が遠のく。なんだこの店は。 さらに、ただ商品を売るだけでなく、奇妙な住人たちとのクエストが発生するのも特徴だ。幽霊が出たり、忍者が現れたり、挙句の果てには母親から妙な呼び方をされたり(翻訳の愛すべきガバさ加減も含めて面白い)。

単調になりがちな「仕入れ→販売」のループに、こうした突発的なイベントやストーリー要素が絡むことで、「次はどんなトラブルが起きるんだ?」というワクワク感が持続する。Akhir Pekan Studioの前作『Laundry Store Simulator』を楽しめた人なら、このノリは実家のような安心感だろう。

荒削りだが、光る原石のような魅力

もちろん、手放しで絶賛できる完璧なゲームかと言われれば、答えはNOだ。 在庫管理のUIは不親切で、どの本が何冊足りないのかを確認するために、倉庫とPCを往復する「リアルな徒労感」を味わうことになる。翻訳も一部怪しいし、挙動が怪しいバグに遭遇することもある。

しかし、それら「不便さ」を補って余りある魅力がこのゲームにはある。 店が大きくなり、スタッフを雇い、自分は悠々とレアなコミックの収集や、フィギュアなどの装飾に凝り始める頃には、完全にこの街の住人になってしまっている自分がいた。

自分の好きなものを詰め込んだ城を守り、サンダルで外敵を排除し、オタク文化を地域に根付かせる。そんな「戦う店長」になりたいなら、本作は間違いなく買いだ。バグや不便さすらも笑って楽しめる寛容な心を持って、ぜひこのカオスなコミック帝国に足を踏み入れてみてほしい。


ゲーム概要

関連性のありそうな記事