1980年代のアクション映画といえば、筋肉モリモリのマッチョマンが巨大な銃を片手に、たった一人でテロリストの軍勢を壊滅させるのがお約束だった。そんな往年のハリウッドの熱いノリを、あろうことか「伝統的なターン制ダンジョンクローラー(DRPG)」のシステムにブチ込んだ奇作が登場した。
それが本作『Eye of the Commando』だ。一見すると、おバカなパロディ一発ネタのようにも思える。しかし、実際に戦場へ足を踏み入れると、そこには驚くほど緻密で、中毒性の高いタクティカルな戦闘が待ち受けていた。
自分が動けば敵も動く、だが「自由の弾丸」は即着弾する
基本的なゲームデザインは、いわゆる『ダンジョンマスター』や『不思議のダンジョン』の流れを汲むグリッド移動式のターン制だ。プレイヤーが1マス動くか、90度方向転換すると、敵やトラップ、そして「敵が放った弾丸」も1マス進む。
特筆すべきは、銃撃戦におけるターン制の解釈である。画面を埋め尽くすほどの敵弾が飛んできても、自分が足を止めれば、すべての弾丸が空中でピタリと停止する。次の1歩をどちらに踏み出せば被弾を避けられるか、じっくりとチェスのように戦略を練ることができるのだ。
しかし、こちらが引き金を引く時は話が別である。コマンドーの放つ弾丸は「自由の力」によって、ターンを消費することなく一瞬で敵に着弾する。この非対称なルールが圧倒的な爽快感を生み出しており、さながら「 bullet hell(弾幕シューティング)」を脳内で超高速演算しながら切り抜けていくような、唯一無二のプレイフィールを実現している。
荒削りな操作性を超えた先にある、試行錯誤の快感
ゲーム開始直後は、独特の操作感に少し戸惑うかもしれない。敵に囲まれてパニックになると、横移動(ストレイフ)をしようとして、誤ってその場で旋回してしまい、無駄にターンを消費してハチの巣にされる、といった苦い経験を誰もが通るはずだ。
だが、このゲームはプレイヤーを理不尽に突き放すことはない。手痛い一撃を食らったとしても、それは100%自分の戦術的ミスであり、次はどう動くべきかという明確な学習に繋がる。死んでは覚え、死んでは覚えるトライ&エラーのサイクルが非常に心地よく、気づけば「もう1回だけ」と深夜まで島への突撃を繰り返してしまう凄まじい牽引力がある。
難易度はイージーモードであっても骨太で、常に適度な緊張感が保たれている。さらに、戦場を盛り上げるシンセサイザー全開のアクション映画風BGMが素晴らしく、曲のビートに合わせて自然とキーを叩いてしまうほどテンションを爆上げしてくれる。
自由度の高いビルド構築と、探索を裏切らない固定マップ
戦場でのアイテム収集とビルドの構築も非常に熱い。倒した忍者からブーツを奪い取り、拾い集めた武器アタッチメントで愛銃を強化していく。もしアタッチメントが余ったら、その辺の「ダクトテープ」でさらに銃へ巻きつけて無理やり強化できるという、脳筋仕様なシステムも世界観にマッチしていて最高だ。
マップは昨今流行りのローグライクな自動生成ではなく、すべて開発者の手によって緻密に作られた固定配置となっている。最初の砂浜強襲から始まり、悪の組織の拠点である火山要塞の深部へと進むにつれ、スイッチやワープ床、コンベアベルトといった伝統的なDRPGのギミックが牙を剥く。壁を破壊した先にある隠し部屋やシークレット要素も豊富で、マップを隅々まで探索する喜びがしっかりと用意されている。
現時点では早期アクセスということもあり、ボリューム自体はコンパクトにまとまっている。しかし、エンドレスに敵が押し寄せる「レイジモード」なども実装されており、価格以上の満足感は間違いなく得られる仕上がりだ。何より、バグ報告に対する開発者の修正対応が極めて迅速で、コミュニティとの距離が近い点も、今後のアップデートへの信頼感を高めている。
唯一無二の「渇き」を潤す、筋肉と硝煙のワンマンアーミー
洋画のパロディ精神に満ちたユーモア、下品なまでの男らしさ、そして画面中央で激しく主張する主人公の後ろ姿。ビジュアルのインパクトに目を奪われがちだが、その本質は極めて硬派で知的なタクティカルシューターである。
レトロゲームへのリスペクトと、新たなゲームジャンルへの挑戦が見事に融合した本作。銃と爆発、そしてターン制RPGを愛するすべてのゲーマーに、この熱い「コマンドースピリット」を体感してほしい。
ゲーム概要
- タイトル: Eye of the Commando
- ジャンル: ターン制3Dダンジョンクローラー / タクティカルシューター
- 開発・パブリッシャー: Adventurepro Games LLC
- 発売日: 2024年9月17日(早期アクセス)
- 価格: 1,700円
- 対応言語: 英語(※ゲーム内のテキスト量は比較的少なく、基礎的な英語力でプレイ可能)
- 主なシステム: 4方向グリッド移動、90度ターン、ターン連動型の敵弾回避、武器カスタマイズ
- ストアページ: Steam ストアリンク