1980年代の風情が漂う自室。デスクの上に置かれているのは、古びたトラのおもちゃのキーボードと、胡散臭い4トラックのシーケンサー。『OFFBEAT』は、そんな小さな機材からスタートする請け負い作曲家シミュレーションだ。
専門知識が必要なDTM(デスクトップミュージック)の世界を、これ以上ないほどポップに、そして直感的なゲームとして落とし込んだ本作。実際にプレイして感じたその唯一無二の魅力を紹介する。
ノームやシュレッダーが奏でる奇妙で愛おしいサウンド
最初は「結婚式のBGM」や「フィットネス動画の音源」といった小規模な依頼から始まる。限られた音数と機能の中で、クライアントの要望に沿ったメロディを組み上げていく作業は、まるでパズルを解くような心地よさだ。
稼いだ報酬で機材を増強していくのだが、手に入るアイテムが実に一癖ある。歌う庭のノーム人形や、紙を切り刻むシュレッダーなど、一見すると楽器とは言えない奇妙なガジェットばかり。
しかし、これが実に良い音を出す。
ノブを回し、スライダーを動かし、音の波形を変えていく感覚は、実用のDTMソフト(DAW)でシンセサイザーのパラメーターを弄る感覚そのもの。難解な音楽理論を意識させず、「このダイヤルを回したらどんな音が出るんだろう?」という純粋な好奇心を刺激する設計が見事だ。
初心者を導き、経験者を唸らせる絶妙なゲームデザイン
音楽制作ソフトの画面を開いて「何から始めればいいか分からない」とフリーズした経験がある人は少なくないはずだ。
本作は、そうした初心者が直面する「白紙の恐怖」を丁寧に取り除いてくれる。提示される「お題」や制約がガイドラインとなり、自然とフレーズ作りのコツが身につく仕組みだ。ノートシステムによるTipsも優しく、シーケンサーの仕組みやレコーディングの基礎が、遊んでいるうちに感覚として体得できる。
一方で、10小節という制限の中でいかに個性を出すかというアプローチは、日頃から作曲をしているプレイヤーにとっても刺激的な制約となり得る。おもちゃの鍵盤から始まった制作環境が、徐々に本格的なシンセサイザーへ進化していくプロセスは、すべての音楽好きの所有欲と創作意欲を掻き立てるはずだ。
作った楽曲はすべて自分の資産に
本作最大のポイントは、単なるミニゲームにとどまらない点だ。作中でシミュレートされた音源から生み出した楽曲は、そのままWAVファイルとしてPCへ書き出すことができる。
そして何より素晴らしいのが、生成した音源の権利はすべてプレイヤー自身に帰属するという点だ。ゲーム内で偶然生まれたお気に入りのループを、実際の音楽活動や動画のBGMとして活用することも自由。
「ゲームで遊んでいたはずが、いつの間にか1曲完成していた」という体験は、他のどの作品でも味わえない特別な快感を与えてくれる。
ゲーム概要
- タイトル: OFFBEAT
- ジャンル: 音楽制作タイクーン / シミュレーション
- 開発元: Whetstone Games
- パブリッシャー: Pantaloon
- 発売日: 2026年7月22日(早期アクセス開始)
- 価格: 1,600円
- 言語対応: 日本語対応未定
- ストアページ: Steamストアリンク