映画『バイオハザード』レビュー プレイしたことのない、最高の「バイオハザード」

プレイしたことのない、最高の「バイオハザード」よい「バイオハザード」映画とはどのようなものであるべきかについての考えがどうであれ、懐疑的な人にはそれを一旦脇に置き、「バイオハザード」というIPを新たに映画化した本作でザック・クレッガーが見せるものに身を委ねることをお勧めしたい。主人公に不利な状況が積み重なることや、立ちはだかるあらゆる不気味な敵を明確に理解したうえで、クレッガーはゲームの「バイオハザード」がもつ精神を、文字どおりではないにせよ見事に映画へ落とし込んだ。本作は、緊張感に満ち、随所に大いに笑える場面があり、さらに主演オースティン・エイブラムスによる力強い演技が光る、ジェット燃料で突っ走るようなホラー体験へと仕上がっている。 冒頭のフレームから明らかなのは、作品全体にかなりの勢いがあることだ。上映時間95分の映画『バイオハザード』は、長々と引き延ばすのではなく、楽しい時間を提供することに徹しており、医療配達員のブライアン(オースティン・エイブラムス)が、山を越えてラクーンシティ総合病院へ優先度の高い荷物を届けるという土壇場の依頼を引き受けるところから、怒涛のスタートを切る。そこから10分も経たないうちに最初のゾンビが登場し、それ以降、クレッガーはブライアンを、彼には対処する術のないグロテスクなびっくりハウスの迷路のような状況へと、あまり間を置かずに放り込み続ける。そして、それがしばしば大いに笑える展開を生んでいる。 たしかに本作はしばしば非常に笑える作品だが、それがシリーズそのものを笑いものにしているように感じられることは決してない。クレッガーは、「バイオハザード」が歴代作品から受け継いできた大仰で芝居がかった持ち味を、いつ、どの程度まで笑いに利用するのか、あるいはブライアンの不手際によって、どこまでアクションを予想外の方向へ脱線させるのか、その加減をおおむねうまく見極めている。クレッガーは、緊張感を高めながら、その緊張が笑いに転じるのか恐怖に転じるのかを見抜けないようにすることにも長けており、その予測不能なエネルギーが本作の全体に行き渡っている。このダークコメディの傾向は、いまやクレッガーの持ち味となっており、現在進行中のラクーンシティ事件がもたらす世界を揺るがすほどの事態に対する、意外かつ効果的なカウンターバランスとなっている。皮肉なことに、やや空虚で古びて感じられるのは、「バイオハザード」のゲームとしての出自に触れる、ほんの一握りのメタ的なジョークだけだ。それ以外の点ではクレッガーは、たとえそれが期待を裏切ることを意味するとしても、双方のメディアにとって有益な形でビデオゲームを映画化する方法を理解することに、おおむね非常に成功している。 そして主人公という点でも、オースティン・エイブラムス演じるブライアンは間違いなく期待を裏切る存在だ。レオン・S・ケネディやクリス・レッドフィールドのようなアクションヒーローの型からはほど遠く、ブライアンはちょっとした臨時収入を稼ぎ、画面には登場しない恋人ミシェルとの切迫した関係の問題をなんとか乗り越えようとしている、ごく普通の人間にすぎない。『WEAPONS/ウェポンズ』で主役を食うほどの存在感を見せたエイブラムスは、本作で主演へと昇格した役目を難なくこなしており、その演技はキャラクターが一見して与える単純な印象から想像されるよりもはるかに巧みだ。エイブラムスは本作における長い時間を、画面に登場する唯一の(人間の)俳優として過ごす。クレッガーはブライアンが自分の行動を語りながら切り抜けなければならないさまざまな状況へ彼を追い込み、しかもその最中に笑いどころも同時に成立させなければならない場面が多い。エイブラムスは『WEAPONS/ウェポンズ』のキャラクター(同作では薬物中毒の強盗を演じていた)がもっていた熱狂的なエネルギーを取り入れ、それを同じように神経質でありながら、はるかに地に足がついていて共感しやすい人物へと絞り込んでいる。 たしかに、あるはずのない場所から触手の怪物が飛び出してきたとき、ブライアンは普通の人間ならおそらくそうするであろう反応を見せるし、エイブラムスとクレッガーの両者も、ブライアンがたびたび圧倒される様子を心から楽しんでいるようだ。それはほとんどの場面で笑いとして描かれているが、そうしてすぐにいっぱいいっぱいになってしまう性質は、ミシェルとの会話を経てブライアンが向き合うことになる、ささやかな人物成長の軸にもなっている。 本作は、周囲の人間が次々と唸り声を上げる怪物へと変貌していくなかでも、ブライアンが何に戸惑い、何を理解しようとしているのかをはっきりと描いている。本作は、それに本当の重みをもたせるためにことさらに力を注いでいるわけではないが、ブライアンの不安は十分に機能しており、彼が生き延びなければならない後半のいくつかの場面に物語上の軸を与え、ある程度の奥行きを加えている。 ゲームならではの感覚を称えようとする姿勢が明確な本作は、シリーズを象徴するようなゲームプレイの瞬間を、単なるファンサービスや「元ネタがわかった」と思わせるだけの引用をはるかに超える形で、ホラー映画の演出へと昇華させることに一貫して成功している エイブラムスが見ていて飽きない俳優であることは幸いだ。というのも、映画『バイオハザード』の助演陣には、1~2シーンほど登場して状況を説明する以上のことをする機会が、ほとんど与えられていないからだ。演技の面で誰かが悪いわけではない。ただ、助演陣の誰かが本当に優れた演技を見せる余地が、ほとんどないのである。ポール・ウォルター・ハウザー演じるアンブレラ社の職員は、アンブレラ社がいかにひどい組織であるかを示すのに十分なだけの時間、スポットライトを浴びる。しかし、こうしたキャラクターは、本作が展開から展開へと駆け抜けていく道すがら、脇を通り過ぎていく道端の木々のようなものだ。ハンドルを握るエイブラムスとともに楽しめているかぎり、この点はまったく気にならないだろう。だが、評価を決めかねているなら、こういったラクーンシティの市民たちともう少し長く過ごしたかったと思うかもしれない。 もちろん、本作の真の主役は、接触したあらゆる人体組織を急速に変異させる性質をもつt-ウィルスに冒された、哀れで不運な者たちだ。ゾンビもあちこちに登場するが、「バイオハザード」のどんなゲームをプレイするときだってそうであるように、映画『バイオハザード』を観る体験においても、ゾンビは使い捨て同然の存在にすぎない。「バイオハザード」を前へと進めているのは、「普通のゾンビ」の域を超えて進化した、より独創的で悪夢のようなクリーチャーたちだ。クレッガーが作中で2体目のクリーチャーを繰り出す頃には、生きているものなら何であれ、次の瞬間には触手や眼球が入り乱れて噴き出す怪物へと変貌しかねないことが明らかになる。そして、もっと多くの映画が、こうした不確実性を時限爆弾として活用してもよいはずだ。 これらのクリーチャーは、「バイオハザード」のラヴクラフト的なデザインの方向性にしっかりと馴染んでいる。クレッガーと彼の率いるチームは、クリーチャーが粘液を滴らせ、のたうち、這いずり回る、その異形の姿を愛情たっぷりに描き出している。クリーチャーたちがますます不気味になっていくにつれ、こうした恐怖に対するエイブラムスの大げさで悲鳴を上げるようなリアクションも、映画が進むほど、いよいよ納得のいくものになっていく(そして幸いなことに、見どころの大部分は宣伝では伏せられている)。ラクーンシティの中心部へ向かうブライアンの旅は、実質的にこの遺伝子が生み出した地獄絵図をできるだけ多く巡るための口実となっており、「新しい場所、新たな気味の悪いモンスターを避ける」というサイクルの繰り返しに飽きてしまう可能性はあるものの、クレッガーがこれらを登場させ、さらに恐怖を高めていく手法の創意工夫は、先へ進むにつれて新たなクリーチャーを発見していく、単調な繰り返しをしばしば上回っているように感じられる。 ゲームのプロットの細部ではなく、ゲームならではの感覚を称えようとする姿勢が明確な本作は、シリーズを象徴するようなゲームプレイの瞬間を、単なるファンサービスや「元ネタがわかった」と思わせるだけの引用をはるかに超える形で、ホラー映画の演出へと昇華させることに一貫して成功している。弾薬を探す、迫り来る敵を見つける、敵が距離を詰めてくるなかで時間に追われながらリロードする、絶妙なタイミングで一発を撃ち込む、自分では対処できないかもしれない何者かに暗闇へと誘い込まれる……。クレッガーによる映画『バイオハザード』には、こうした要素が随所にちりばめられており、それらは単にゲーマーに敬意を表するためのものではなく、その瞬間ごとの恐怖を高めるために用いられている。 そうした姿勢はダリウス・ウォルスキーの撮影にも引き継がれており、全編を通じてブライアンの視点を強調しつつ、ゲームにおける三人称視点のアプローチを頻繁に再現することで、次の角を曲がった先に何が待ち受けているかという恐怖を高めている。ウォルスキーはまた、本作全体を通してさまざまな光源を実に巧みに活用しており、特に雪の降る道路で事態が悪化していく序盤の場面では、車の外部と内部の照明を使って、陰鬱で緊張感のある効果を生み出している。共同作曲者のライアン・ホラデイとヘイズ・ホラデイも、不協和音を交えた遊び心のあるスコアでクレッガーの取り組みを支えており、ブライアンが暗く見慣れない空間をよろめきながら進むなか、見せ場となる瞬間を大胆に際立たせることと、緊張感をくすぶらせ続けることの間で、絶妙なバランスを取っている。

つづき

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