シリーズ史上最高の空戦と、屈指のミッションデザインが彩る傑作「戦争を舞台にした反戦芸術作品を作ることは不可能だ」という説がある。何をどうしようと、作品そのものが必然的に戦争を肯定するものになってしまう(あるいは、そう解釈される)というのだ。この主張には共感できる部分がある。『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』が、英雄的なエースパイロットであることがいかに素晴らしいかを描いた戦争の物語だからだ。しかし同時に、本作は臆することなく反戦の立場を取り、プロパガンダの役割、象徴の力、ナショナリズムやグローバリズムといった複雑なテーマを扱っている。その射程はさらに、企業が世界情勢に影響を及ぼし、それを操作すること、ソーシャルメディア、真偽の定かでないニュースの台頭、戦争の代償と惨禍、そして国境のない世界がどのような姿になり得るかにまで及ぶ。その物語は驚くほど現代社会に響くことがたびたびあるが、本作をプレイした時間を思い返すと、私の思いはひとつの考えへと立ち返る。それは、「シーヴの翼」が直接明言することはないものの、心の奥底で深く抱いている信念――この世界と登場人物たちにとって起こり得る最善のことは、戦争が終わり、誰ひとりとして二度と戦闘任務で飛ぶことがなくなることだ、という信念である。本作は、卓越した空戦に、メロドラマ的ながら心を打つ物語、今年屈指のサウンドトラック、そして見事なビジュアルデザインを組み合わせ、ここで起きていることのすべてがいかに悲惨であるかを決して忘れさせない戦争ゲームに仕上がっている。 「ACE COMBAT 8」の舞台は『ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN』(レビュー)の約10年後だが、前作を知らなくても楽しめる。本作でソトア共和国は、空軍力と「トニトルスの槍」と呼ばれる軌道ミサイル攻撃を用いて、中央ユージア連合(FCU)に電撃侵攻を開始する。FCUの首都シーヴは陥落する。打ちのめされ、壊滅状態となったFCUの残存勢力は、平時ならおそらく博物館として保存されていたであろう老朽化した旧式空母「エンデュランス」の甲板を拠点に、望みのない防衛戦を続ける。名もなき戦闘機パイロットであるプレイヤーキャラクターは、エンデュランスの救難ヘリの一機に海から救い上げられ、すぐさま、FCUのエース中のエースであるジャン・“レックス”・コープの伝説の異名「シーヴの翼」を受け継ぐことになる。 だが、問題はそのすべてが嘘だったということだ。コープは卓越したパイロットだが、敵機を一機も撃墜したことがない。彼の撃墜数は、ユージアの人々に希望を与えるために捏造された神話なのだ。「シーヴの翼」が空にいる限り、戦いはまだ終わっていない――人々はそう言う。コープの任務は、自らの部隊であるジョーカー隊を連れて帰還することだ。彼はその任務を見事に果たしてきた。しかし、あなたがソトア共和国のエース、影22と遭遇したとき、コープの運は尽きる。だが、「シーヴの翼」は死ぬことを許されない。そこであなたはその役目と、コープがかつて使っていたコールサインを引き継ぐことになる。あなたは異名そのものになったのだ。そして、伝説が事実となったのならば、その伝説が記事となって世を駆け巡り、、ソーシャルメディアで一気に拡散されるのを見届ければいい。しかし、ジョーカー隊はもはや逃げるだけでは足りない。結果を出す必要がある。あなたが敵機を撃墜し始めると、「シーヴの翼」の伝説と現実との境界が曖昧になり始める。 開発チーム「PROJECT ACES」が紡ぎ出した魅力的な物語は、ジョーカー隊の面々を中心に据えた真摯なものとして展開していく。その中心にいるのは、元教師からパイロットに転身し、ジョーカー隊の他の隊員たちの指導役であり、あなたの僚機でもあるエリントン・バクスター(TACネーム「プロフェッサー」)だ。ジョーカー隊最年少のターシャ・セヴェルスキーは、その世代にひとりいるかどうかの逸材というほどの民間人のスタントパイロットだが、戦争によって従軍を強いられ、敵機を撃墜することを拒んでいる。そして、無口なロックンロール愛好家のウィリアム・コスター(TACネーム「ノイズ」)は、あなたの通信回線に曲を大音量で流しながら、ターシャの僚機を務めている。ほかにも、あなたを指揮する副長やクィーン隊の面々、あなたを祭り上げるメディアの動きなど、多くの脇役が「シーヴの翼」の神話を形作っていく。そして物語を通じて、コープの伝説(そして彼の魂)も消えることなく残り続ける。 誤解のないように言っておくが、この物語を成り立たせているのは、キャラクターたちだ ばかげて聞こえるかもしれないが、それも「ACE COMBAT 8」のほかのあらゆる要素と同じく、驚くほどうまく機能している。そして、本作の世界において生死が極めて重要な人物とのつながりを、プレイヤーが築き続けられるようにしている。誤解のないように言っておくが、この物語を成り立たせているのは、キャラクターたちだ。彼らはよく描き込まれた、複雑で興味深い人物であり、声優陣の本当に素晴らしい演技によって、さらに魅力を増している。彼らとプレイヤーとの関係が、「ACE COMBAT 8」の物語の大部分を動かしている。出撃するたびに、私は彼らを必ず連れて帰ろうと思っていた。 「ACE COMBAT」シリーズは長らくコックピットの中から物語を語ってきたが、本作では、プレイヤーキャラクターは空母エンデュランスの甲板に立ち、仲間のパイロットや空母に避難してきた民間人たちが集う食堂、格納庫、ブリーフィングルームなどでも時間を過ごす。こうした場面は、ジョーカー隊の面々やエンデュランスに乗艦している人々とのつながりを深めてくれるだけでなく、戦争の代償を痛感させ、この世界がコックピットの外にも存在しているのだと感じさせてくれる。場面の中でできることは、周囲を見回したり、簡単な操作をしたりする程度だが、「ACE COMBAT 8」でもとりわけ印象深く、心を揺さぶる瞬間がいくつもある。 とはいえ、プレイヤーは戦闘機のパイロットだ。その本領は空にある。そして、まさにその空中戦で「ACE COMBAT」は真価を発揮する――(手垢にまみれた表現で恐縮だが)文字どおり飛翔するのだ。物語、ゲームプレイのさまざまな瞬間、ミッション設計を巧みに織り合わせ、最新鋭の戦闘機にふさわしい、見事で優雅な機動を本作は生み出している。本作は、過去作と同じくミッション制のゲームだ。次の出撃についてブリーフィングを受けたら、機体、兵装、パーツを選ぶ。ミッションをクリアして獲得したポイントを使い、新しい機体やそれらを購入できる。選択内容は、搭載できるミサイルや特殊兵装の数、それらが与えるダメージ、機体の操縦性など、あらゆる要素に影響する。望むなら、部隊の仲間の機体も自分で装備を整えられる(あるいは、そのミッションに合った装備を自動で割り当ててもらうこともできる)。そして空へと舞い上がり、いよいよフライトの時間となる。 たいてい、最初の任務はごくシンプルだ。エンデュランスを防衛したり、飛行場を攻撃したり、友軍機を守ったり、輸送機をいくつか撃破したりする。だが、こうした最初の目標は、空へ飛び立つための口実にすぎない。「ACE COMBAT」の魅力は、つねに飛ぶことそのものにあり、頭上に広がる空の無限の可能性が、自機の限界や任務の現実と交差するところにこそ表れている。機体の操作に大きな制限がかかるスタンダード操作でプレイすることもできるが、可能であればぜひエキスパート操作でプレイしてほしい。機体のピッチ、ロール、ヨーを完全に操れることが醍醐味だ。それは、飛行を振り付けるような陶酔的な瞬間をもたらすと同時に、旋回や高度の判断を誤れば、壊滅的な墜落につながる痛恨のミスを招くことにもなる。 プレイヤーが没入するのは、こうした細かな瞬間だ。迫り来るミサイルをかわす高G旋回、特殊な対空兵装で複数の機体をロックオンし、一度に4機を撃墜すること、あるいは街なかを巧みにすり抜け、瓦礫の上を縫うように飛ぶこと。標的の6時方向につき、狙い澄ました機関砲の連射で撃墜するときや、巨大な輸送機の背後にとどまるのにちょうどよい速度を見つけ、機首を向けて、ミサイルを一発も撃たずに機関砲でそのエンジン群をずたずたにするとき、「シーヴの翼」は戦闘機パイロットの夢を見事に体現する。 物語、ゲームプレイのさまざまな瞬間、ミッション設計を巧みに織り合わせ、最新鋭の戦闘機にふさわしい、見事で優雅な機動を本作は生み出している …
つづきエースコンバット8 ウイングス・オブ・シーヴ -PS5
空よ、教えてくれ| プレイヤー自身がエースパイロットになって、本物のような没入感のある空を自由自在に飛び回る爽快感と、 自身の判断で敵機を次々に撃墜・破壊して一掃していく快感を味わいながら、 難局を勝ち抜いていく達成感を得られるドラマティックフライトシューティングゲーム。
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