終電を逃した先で迷い込んだのは、誰もいない不気味な幽霊街。そこで偶然「町長の割当書」を拾ってしまったことから、怖がりな少女「メイ」の奇妙な街づくりライフが幕を開けます。
本作は、どこか懐かしくも新しい独特な世界観のなかで、廃墟となった街を掃除・修復し、愉快なモンスターたちを住民として迎え入れていく3Dパズルアドベンチャーゲームです。
恐怖を「勇気」に変えて街を広げる、極上のゲームループ
ゲームの基本は、街を探索して素材を集め、住民たちのリクエストに応えるアイテムをクラフトしていくこと。特筆すべきは「勇気(Confidence)」のシステムです。
主人公のメイは非常に臆病で、最初は街をうろつくモンスターに遭遇するだけで、驚きのあまり自宅まで全力疾走で逃げ帰ってしまいます。暗闇に長く留まることすらできません。しかし、街のゴミを拾い、建物を修理し、幽霊たちの未練を晴らしていくことで、メイの「勇気」が徐々に成長していきます。
最初は直視することすら怖かった異形の存在たちが、勇気を出すことで「実はめちゃくちゃフレンドリーで、手助けを求めているだけの良い奴ら」だと気づいたときの感動はひとしおです。探索範囲が広がるにつれてショートカットが開通し、最初はあんなに遠く感じた我が家へ一瞬で戻れるようになったときの街の発展具合には、確かな充実感を覚えます。
脳を心地よく刺激する、秀逸なパズルとミニゲーム
中盤から後半にかけては、謎解き要素がグッと歯ごたえを増していきます。幽霊の本名を導き出す推理や、終盤に訪れるギミック満載の「呪われた大邸宅」など、プレイヤー自身のひらめきが試される場面が多数用意されています。決して理不尽な「謎理論」ではなく、ゲーム内のヒントをよく読み、メモを取れば必ず解ける絶妙なバランスです。
また、素材集めを退屈にさせない工夫として、ボウリングの球を使って鉱石を採掘するような、ユニークなミニゲームも盛り込まれています。街が発展すると一部の素材集めが自動化されるなど、プレイヤーの時間を尊重した親切な設計になっているのも好印象です。
感情を揺さぶる「おバカソング」と、強烈すぎる住民たち
このゲームを語る上で絶対に外せないのが、30曲以上に及ぶオリジナル楽曲の存在です。街の記録保管所にあるジュークボックスでレコードを再生すると、なんと「歌」を通じてクラフトのレシピを学ぶことができます。
ラップ、ロック、カントリー、さらには往年の名バンドへのオマージュまで、ジャンルは実に多彩。「サラダの作り方をフランス語のラップで聴かされる」といった、シュールで狂気じみた演出には思わず爆笑してしまいました。BGMを普段オフにするような人でも、本作のサウンドトラックだけは耳を傾ける価値があります。
住人も個性の塊です。ラッパーを引退したネジ巻き式の時計男「グランドファクター・クロック」や、隣の怪しいマンションの傲慢な地主「ディック・テーター」など、名前から設定まで、これでもかとダジャレやユーモアが詰め込まれています。彼らが発する特有のボイス(英語ではなく、キャラクターに合わせた奇妙な効果音)と、テキストの掛け合いが最高に愛くるしいのです。
不気味なのに温かい、忘れられない体験
ビジュアルはいわゆる低ポリゴンのクレイアニメ調で、ティム・バートン監督の映画や、かつてのPS2時代のカルト名作を彷彿とさせる、奇妙でどこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
ゲームの根底にあるのは「恐怖を乗り越え、他者を理解し、手を取り合ってコミュニティを築く」という、非常に優しくポジティブなメッセージです。最初は不気味に見えた街が、最後にはかけがえのない「我が家」のように思えてくる。エンディングを迎えたとき、筆者の心には温かい余韻が広がり、少し涙腺が緩んでしまいました。
街のデコレーション要素や詳細なマップ機能がないといった荒削りな部分はありますが、それを補って余りあるほどの情熱とオリジナリティが、この小さなインディーゲームには詰まっています。「不気味で、でも最高に居心地が良い」この不思議な街の町長に、あなたも就任してみませんか?
ゲーム概要
- タイトル:Mayor May Knott
- 発売日:2026年4月30日
- 開発元/パブリッシャー:Ravenous Images
- 価格:2,800円
- ジャンル:3Dパズルアドベンチャー / 街づくりライフシミュレーション
- プレイ人数:1人(シングルプレイ)
- 対応プラットフォーム:PC(Steam)
- 言語対応:※本作は日本語に対応していません(英語のみ)。テキストボリュームが多く、言葉遊びや謎解きに英語の読解が必要となる点にご注意ください。
- ストアリンク:Steam ストアページ