GZDoomエンジンで描かれる、20XX年のカリフォルニア州サンセットシティ。そこはネオンがギラつく狂気と、暴力が支配するディストピアだ。
今回紹介するのは、MetacorpとVaporwareが開発を手掛ける『Beyond Sunset』。一見すると懐かしの「DOOM」系シューター(いわゆるブーマーシューター)に見えるが、本作は単なる懐古趣味では終わらない。RPG要素を色濃く反映したストーリーテリング、そして刀による近接戦闘が融合した、極めて野心的でスタイリッシュな作品に仕上がっている。
主人公は、冷凍睡眠から目覚めた記憶喪失の女性「ルーシー」。彼女が振るう刀と銃火器が、この腐敗した街にどのような嵐を巻き起こすのか。実際にサンセットシティを駆け抜けた筆者が、その魅力を紐解いていこう。
「ヴェイパーウェイヴ」な世界に溺れる快感

ゲームを起動してまず圧倒されるのは、そのビジュアルとサウンドだ。紫とピンクを基調としたネオンカラー、粗いピクセルで描かれる摩天楼、そして鼓膜を震わせる極上のシンセウェーブ・サウンドトラック。
これらが一体となって押し寄せてくる感覚は、まさに「没入」の一言。レトロFPSの無骨さと、現代的なサイバーパンクの美学が奇跡的なバランスで同居している。ただ歩いているだけでも、その独特な空気感に酔いしれてしまうほどだ。特にハイペースな戦闘中に流れるBGMは、プレイヤーのアドレナリンを強制的に引き上げてくる。この音と光の洪水こそが、本作最大の武器と言っても過言ではない。
「斬る」か「撃つ」か、超高速の取捨選択

本作の戦闘は、オールドスクールなFPSの文法に、現代的なハイスピードアクションを掛け合わせている。ダッシュ、スライディング、そして二段ジャンプ。ルーシーの身体能力は驚異的で、戦場を縦横無尽に飛び回ることができる。
特筆すべきは「刀」の存在だ。単なる近接武器ではない。敵の銃弾を弾き返し、逆に相手を葬り去ることができるのだ。遠距離から弾幕を張ってくる敵に対し、あえて正面から突っ込み、タイミングよく弾丸をパリィして一閃する。この瞬間のカタルシスは筆舌に尽くしがたい。
もちろん、ショットガンやアサルトライフルといった銃火器の手触りも良好だ。だが、弾薬や体力は有限。そこで重要になるのが、敵を倒すことでリソースを回復するシステムだ。積極的に前に出て、リスクを冒して敵を「処刑」することで活路が開ける。この「攻め」の姿勢を強要されるゲームデザインが、常にヒリヒリとした緊張感を生み出している。
RPG要素がもたらす深みと探索の楽しみ

単に敵を倒してゴールを目指すだけのゲームではない点も、『Beyond Sunset』のユニークなところだ。サンセットシティは広大で、インタラクティブな要素に満ちている。
街にはNPCが存在し、彼らとの会話からサイドクエストが発生することもある。経験値を稼いでスキルをアップグレードしたり、隠されたアイテムを探して入り組んだ路地裏を探索したりする時間は、まさにRPGのそれだ。特にエピソード1で見られるオープンなエリア構成は探索の自由度が高く、「次はどこへ行こうか」というワクワク感が止まらない。

また、電脳空間へダイブするハッキングパート(System Shockへのオマージュを感じさせる!)が良いアクセントになっており、単調になりがちなシューター体験に知的なスパイスを加えている。
総評:レトロエンジンの極致で踊る、至高のサイバーパンク体験

正直に言えば、難易度は決して低くはない。敵の攻撃は激しく、マップ構造は時に複雑で迷うこともあるかもしれない。一部のボス戦では、理不尽とも思えるほどの猛攻にさらされるだろう。しかし、それらを乗り越え、自分のプレイスキルが向上したと実感できた時の達成感は、昨今の親切設計なゲームでは味わえない種類のものだ。
『Beyond Sunset』は、過去の名作FPSへの敬意を払いながらも、現代的な解釈で「カッコいいアクション」を再定義しようとしている。もしあなたが、80年代のアニメ映画のような世界観で、自らの反射神経を限界まで試したいと願うなら、サンセットシティへのチケットを買わない手はない。
刀を抜け。そして、この狂った夕日(サンセット)の向こう側へ駆け抜けろ。
ゲーム概要
- 開発元: Metacorp / Vaporware
- パブリッシャー: Movie Games S.A.
- 発売日: 2025年9月13日
- 価格: 1,200円
- ジャンル: サイバーパンクFPS / RPG
- プラットフォーム: PC (Steam)
- 日本語対応: 未定
- ストアリンク: https://store.steampowered.com/app/1665260/Beyond_Sunset/






