雨の音、紫煙、そして色褪せた写真。1940年代のノワール映画のような世界に浸りたいと願うゲーマーにとって、スペインのインディースタジオIndigo Studiosが贈る『The Last Case of John Morley』は、まさに求めていた一片のパズルピースかもしれない。
本作は、引退間近の探偵ジョン・モーリーとなり、20年前に起きた未解決殺人事件の謎に挑む一人称視点のミステリーアドベンチャーだ。JanduSoftより2025年11月28日にリリースされたばかりの本作は、派手なアクションや複雑怪奇な推理システムを排除し、ひたすらに「雰囲気」と「物語」に重きを置いた作品となっている。
筆者が実際にロンドンの闇へと足を踏み入れ、そこで目撃した真実について――ネタバレを厳重に避けつつ――レビューをお届けしよう。
孤独な探偵が吸い込む、1940年代の空気感

ゲームを開始してすぐに肌で感じるのは、圧倒的な「ノワール」の美学だ。薄暗いオフィス、タイプライターの音、そして常に付きまとう湿っぽい空気感。Unreal Engine 5で描かれるグラフィックは、インディー規模ながらも光と影の使い方が巧みで、プレイヤーを一瞬にして1940年代へと引きずり込む。

特に秀逸なのはサウンドデザインだ。静寂を破る床のきしみ、遠くで響く雷鳴、そしてメランコリックなジャズの旋律。これらが相まって、単なる探索が「何か見てはいけないものを見てしまうのではないか」という心地よい緊張感へと変わる。主人公ジョン・モーリーの声優による語りも渋く、ハードボイルド小説を読み進めているような没入感を与えてくれる。
正直に言おう、この世界観だけで「買い」だと感じる瞬間があった。
推理よりも「体験」を重視したゲームプレイ

本作を「本格的な推理ゲーム」として期待して手に取ると、肩透かしを食らうかもしれない。ここにあるのは、シャーロック・ホームズのように脳をフル回転させる演繹法ではなく、物語を前へ進めるための「鍵探し」と「記憶の再生」だ。
ゲームプレイは非常にリニア(一本道)であり、次に何をすべきか、どこへ行くべきかは常に明確に示される。パズル要素も存在するが、周囲をよく観察すれば解ける難易度に抑えられており、物語のテンポを阻害しない。「ウォーキングシミュレーター」に近い手触りだが、むしろそれが良い。なぜなら、プレイヤーは探偵としての「作業」に忙殺されることなく、事件の背後にある人間ドラマや、不穏な空気感を味わうことに集中できるからだ。
個人的には、証拠品を手に取って回転させたり、書類を読み込んだりする際のUIがシンプルでストレスフリーだった点を評価したい。余計なシステムがない分、純粋にジョン・モーリーという男の視点に同化できるのだ。
3時間に凝縮されたサスペンスと、胸を突く結末

本作のプレイ時間は約3時間から4時間ほど。1,500円という価格帯を考えれば、映画を一本観るような感覚で楽しめる丁度よいボリュームだ。
物語は、ある伯爵夫人からの依頼で幕を開ける。20年前に殺害された娘の真犯人を探してほしい――。古びた屋敷、廃墟となったサナトリウム。探索を進めるうちに、単なる殺人事件だと思われた事案は、より個人的で、より恐ろしい何かへと変貌していく。
道中、最適化不足によるフレームレートの低下など、低予算ゆえの粗さが目につく場面も正直あった。しかし! それらを差し引いても、この物語の結末には価値がある。
淡々と進む捜査の果てに待っているのは、プレイヤーの予想を裏切り、タイトルの『The Last Case(最後の事件)』の意味を重く突きつけてくる展開だ。エンドロールが流れた時、あなたはきっと冒頭のシーンをもう一度見返したくなるだろう。このカタルシスこそが、本作の最大の魅力であり、独自性である。
もしあなたが、秋の夜長に一人、ウィスキーでも片手に短編ミステリー小説の世界に没頭したいなら、ジョン・モーリーのコートを羽織ってみてはいかがだろうか。そこには、忘れられない「雨」が降っているはずだ。
ゲーム概要
- タイトル: The Last Case of John Morley
- ジャンル: 一人称視点ノワール・ミステリーアドベンチャー
- プラットフォーム: PC (Steam), PlayStation 5 (Xbox Series X|Sは後日)
- 発売日: 2025年11月28日
- 価格: 1,500円
- 開発元: Indigo Studios – Interactive Stories
- パブリッシャー: JanduSoft
- 日本語対応: 字幕対応
- ストアリンク: Steam Store






