皆さんは「偉大なる国家」に忠誠を誓っているだろうか? 今回紹介するのは、ディストピアな全体主義国家でアパートの管理人を務めた名作『Beholder』の続編、『Beholder 2』だ。
前作では住人を監視する陰湿な管理人だったが、今作でプレイヤーに用意されたステージは、国家の中枢「省庁」である。あなたは若き野心的なインターン、エバン・レッドグレイブとなり、謎の死を遂げた父の真相を探りつつ、出世の階段を上っていくことになる。
ただし、その階段は他人の不幸と書類の山でできている。
絶望的なまでに「お役所仕事」な日常

本作の基本は、驚くほどリアルで、そして意図的に退屈に作られた「業務」だ。 窓口にやってくる市民の話を聞き、適切な申請書を選び、ハンコを押す。ただそれだけ。最初は「なんだこの単純作業は」と思うかもしれない。しかし、時間が経つにつれて、この単調なリズムが奇妙な中毒性を生み出してくる。
処理した書類の数=金と権威だ。 家賃、光熱費、そして情報を買うための金。これらが常にカツカツな状態で、ミスをすれば罰金。この「生活のために魂を削ってハンコを押す」感覚は、ある種のブラック企業シミュレーターとも言えるし、現代社会への痛烈な風刺とも取れる。
同僚は「仲間」ではなく「踏み台」である

真面目に働くだけで出世できると思っているなら、あなたは国家の犬として三流だ。 本作の真骨頂は、オフィスの同僚たちとのコミュニケーションにある。彼らは一見すると普通の人々だ。しかし、彼らの机を漁り、弱みを握り、あるいは親切な顔をして罠に嵌めることこそが、昇進への近道となる。
ある同僚は禁止されている海外のドラマを見ているかもしれないし、ある同僚は横領をしているかもしれない。それを見つけて上司に報告(密告)した時の、背徳感と達成感の入り混じった妙な興奮は、このゲームでしか味わえない味だ。
もちろん、彼らと仲良くなり、手助けをする選択肢もある。だが、優しさは時として自分の首を絞める。自分が生き残るために、隣の席の「いい奴」を収容所送りにする決断を迫られたとき、あなたの良心は試されることになるだろう。
3D化された陰鬱な世界と、選択の重み

前作の2Dスタイルから一変し、本作は奥行きのある3Dグラフィックを採用している。 冷たく無機質な省庁の廊下、巨大すぎる指導者の像、そして顔色の悪い人々。このビジュアルが、閉塞感をより一層際立たせている。移動が少しばかり遅く感じることもあるが、それすらも「巨大な組織の中での無力感」を演出しているように思えてくるから不思議だ。
ストーリーは一本道ではなく、プレイヤーの選択によって分岐する。父の死の真相に近づくにつれ、国家の闇は深まっていく。最終的にあなたが何になるのか――権力の頂点に立つのか、システムを破壊する革命家になるのか、あるいはただの従順な歯車として終わるのか。 どの結末を迎えたとしても、そこには「自分で選んだ」という重みが残るはずだ。
総評:苦痛すらも楽しむ、大人のための社会科見学

『Beholder 2』は、決して「爽快なゲーム」ではない。 理不尽な請求書に頭を抱え、単調な作業に精神をすり減らし、友人を売った金でパンを買う。そんな重苦しい体験だ。しかし、その苦味の中にこそ、全体主義国家という怪物の恐ろしさと、そこで生きる人間の滑稽さが詰まっている。
もしあなたが、倫理観を金庫にしまって、権力という名の蜜を吸ってみたいなら、この省庁の門を叩くことを強くお勧めする。 もちろん、すべては「偉大なる国家」のために。
ゲーム概要
- タイトル: Beholder 2
- ジャンル: ストラテジー / シミュレーション / アドベンチャー
- 開発元: Alawar Stargaze (Warm Lamp Games)
- パブリッシャー: Alawar
- 発売日: 2018年12月4日
- 価格: 2,000円
- 日本語対応: なし(※日本語化MODあり)
- ストアURL: Steam Store Page






