「資本主義の未来、それは私が吸う小さなストローの中を、あなたが泳いでいくことだ」
そんな狂ったキャッチコピーと共に、とんでもない怪作がSteamに登場した。タイトルは『DRINK HUMAN BEANS』。直訳すれば「人間豆を飲め」。だが、これは明らかに「Human Beings(人間)」とかけたブラックな駄洒落だ。
開発元のLast Dissentが送り出す本作は、人間を仮想商品に変える謎の複合施設を舞台にした、一人称視点のサイコ・ホラーシミュレーターである。公式ジャンルに「電話ベースのインタラクション」とある時点で嫌な予感しかしないが、実際に足を踏み入れると、そこは予想の斜め上を行く「業務」が待っていた。
暗闇とノイズ、そして鳴り響く電話

ゲームを開始してまず感じるのは、圧倒的な「閉塞感」だ。
プレイヤーは「オペレーター」として雇われたらしいのだが、職場環境が最悪である。真っ暗な廊下、絶えず鳴り響く耳鳴りのような環境音、そしてどこか病院や隔離病棟を思わせる無機質な壁。レビューでも多くのプレイヤーが賞賛しているが、本作のサウンドデザインは秀逸だ。ヘッドフォン推奨、というか必須。自分の足音と機械の駆動音が、これほど不安を煽るとは思わなかった。
そして、この世界での唯一の友(あるいは上司?)となるのが「電話」だ。
スマホ風のインターフェースを通じ、指示を受け、謎を解き、業務を遂行する。この電話の操作感が妙にリアルで、かつ焦燥感を誘う。次に何をすべきか明確な指示がないまま放り出される感覚は、まさに新人研修初日に「あとは雰囲気でやって」と言われた時の絶望に近い。
ブラック企業の極北で「価値」を生み出せ

本作の魅力は、その強烈な風刺とユーモアにある。
公式説明文にある「暴力によるストレス解消の機会」や「道徳的な柔軟性」といった求人要件からも分かる通り、本作は現代社会や企業文化、そしてAIへの依存に対する強烈な皮肉が込められている。
プレイ中、何度も「私は一体何をしているんだ?」という疑問が頭をよぎる。廊下を歩き、電話を取り、意味不明なタスクをこなす。ハンドドライヤーの音にビクリとし、コーヒーを飲み(大量のコーヒーが登場する!)、そしてまた闇の中へ。
ストーリーは断片的で難解だ。しかし、そこには確かな「意志」がある。開発者が意図的にプレイヤーを混乱させ、不安にさせようとしているのが伝わってくるのだ。これは単なるビックリ系のホラーではない。じわじわと精神を摩耗させる、もっと知的な何かだ。
言葉の壁を越える「不気味な魅力」

正直に言おう。本作は現時点で日本語に対応していない。
ゲーム内のテキストや電話の会話はすべて英語であり、しかも結構なスピードで流れていく。「英語が苦手だと95%脱落する」というユーザーレビューもあながち間違いではない。
しかし、それでもこの奇妙な世界観には触れる価値がある。QRコードが散りばめられた日常、メタ的な視点、そしてどこか懐かしさを感じる粗いグラフィック。言葉が完全に理解できなくても、「何かがおかしい」という感覚は肌で感じ取れるはずだ。むしろ、言葉が通じない環境で働く恐怖というロールプレイだと思えば、没入感はさらに増すかもしれない。
総評:人を選ぶが、刺さる人には深く刺さる

『DRINK HUMAN BEANS』は、万人向けのゲームではない。
明確なゴールや爽快なアクションを求める人には苦痛だろう。しかし、考察好きや、不条理演劇のような展開、そして「訳の分からない恐怖」を楽しめるゲーマーにとっては、1,200円という価格以上の体験が得られるはずだ。
コーヒーを片手に、資本主義の闇を彷徨ってみてはどうだろうか。ただし、そのコーヒーが本当にただの豆から作られたものかどうかは、保証できないが。
ゲーム概要
- タイトル: DRINK HUMAN BEANS
- ジャンル: ホラー / シミュレーション / アドベンチャー
- プラットフォーム: PC (Steam)
- 発売日: 2025年12月17日
- 価格: ¥ 1,200
- 開発・パブリッシャー: Last Dissent
- 日本語対応: なし
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/2248170/DRINK_HUMAN_BEANS/






