広大な宇宙を舞台にしたゲームと聞くと、ドッグファイトや壮大な銀河帝国の興亡を想像するかもしれない。しかし、ResilientLogic Gamesが放つ『D.R.I.F.T.』が提示するのは、それらとは真逆の、徹底して「個」の視点に立った静かな宇宙だ。
本作の正式名称は「Deep Range Independent Freight and Trade」。プレイヤーは一介の輸送業者として、システムの歯車の一つとなり、淡々と、しかし着実に契約を遂行していくことになる。
英雄ではない、ただの「運送屋」として生きる心地よさ

本作には、プレイヤーを導くドラマチックなストーリーも、選ばれし勇者としての使命も存在しない。あるのは山積みの「契約(コントラクト)」と、無慈悲に流れる時間だけだ。
ゲームを開始してまず驚くのは、その潔いまでの突き放し方だ。チュートリアルは親切とは言い難く、最初はUIの操作に戸惑うかもしれない。しかし、手探りで貨物を積み込み、ルートを計算し、初めての配送を終えた瞬間の達成感は、何物にも代えがたい。
「銀河はお前の成功なんて気にしちゃいない」というキャッチコピー通り、この世界はプレイヤーに媚びない。だが、その冷徹なシステムが、逆に「自分で考えて動いている」という没入感を強烈に引き出している。
効率とリスクの狭間で揺れる、システム主導のゲーム体験

『D.R.I.F.T.』の面白さは、リサーチと意思決定に集約されている。単にAからBへ運ぶだけではない。評判(レピュテーション)が価格やアクセス権に直結するため、どの組織と協力し、どのルートを通るかが極めて重要になる。
実際にプレイしてみると、当初の「地味な作業ゲー」という印象はすぐに覆された。貨物輸送、救助、採掘……限られた時間の中で、いかに効率的なルートを組むか。燃料と機体のコンディションを睨みながら、あともう一仕事こなせるか自問自答する時間は、不思議とアドレナリンが出る。
オートナビゲーションの挙動に少し癖があったり、宇宙空間に寂しさを感じたりする場面もあるが、それすらも「孤独な宇宙の旅」というフレーバーとして機能しているのが心憎い。気がつけば、普段派手なアクションを好む筆者でさえ、「あと1回、もう1件だけ配送を」と深夜までモニターにかじりついていた。
不便さを愉しむ、大人のためのスペースシミュレーター

本作は万人受けするゲームではない。アクション性は皆無であり、常に思考を求められる。しかし、ミニマルで洗練されたUI、心を落ち着かせるサウンドトラック、そしてプレイヤーの行動に淡々と反応する銀河のシステムは、他では味わえない中毒性を持っている。
忙しい日常を忘れ、冷たくも美しい宇宙で、自分だけの商売路を切り拓く。効率を追い求めるプロフェッショナルな快感に浸りたいなら、この1,900円の投資は決して高くはないはずだ。
ゲーム概要
- タイトル: D.R.I.F.T. (Deep Range Independent Freight and Trade)
- ジャンル: スペースシミュレーション / ストラテジー
- 開発・パブリッシャー: ResilientLogic Games
- 発売日: 2025年12月1日
- 価格: ¥ 1,900
- 対応プラットフォーム: PC(Steam)※Linux動作確認済み
- ストアリンク: https://store.steampowered.com/app/4036980/DRIFT/
この独特な静寂に満ちた宇宙で、あなたも運送業を始めてみませんか?






