人類が姿を消し、機械たちだけが都市で稼働を続けるディストピア。本作『All Our Broken Parts(愛とロボット修理技術)』は、医療事故を機に場末の診療所へと左遷されたロボット医師「ルース」となり、次々と訪れるロボット患者を診断・治療していく物語主導のシミュレーションADVです。
現在配信中の体験版(第1章・約1.5時間相当)をプレイし、独特のビジュアルと静謐なトーン、そして機械を通して浮き彫りになる痛切なヒューマンドラマに触れました。
聴診線とドライバーで暴く、機械たちの「人間性」

プレイヤーは聴診線や工具を手に取り、患者のハードウェアを物理的にチェックし、エラー箇所の診断やデータの上書き、切除などを行います。
診療所にやってくる患者たちは皆、どこか現代社会の労働者や個人の苦悩を投影したかのような歪みを抱えています。 視覚とAIモジュールの間で自身の色彩を失いかける美術ユニットや、過剰な営業スマイルのために本心を抑圧し続けるユニットなど、彼らが発する症状は単なるバグにとどまりません。
修理の手順そのものは比較的シンプルなインタラクションですが、パーツを外して内部構造やメモリへアクセスするたびに、患者が秘めていた過去の記憶や感情が露わになります。「修理」という行為自体が、彼らの精神の奥底を覗き見るためのメスとして機能しています。

静寂と哀愁が支配する、詩的で濃密な空気感
画面を彩る緻密なドットアートと、抑制された環境音や要所で差し込まれる劇伴が、ディストピアの乾いた孤独感を際立たせています。
物語の根底には「なぜロボットたちは夢を見るのか」「消去できない記憶の正体とは」「未だ見ぬ“海”は存在するのか」といった実存的な問いが存在します。機械でありながら人間のように傷つき、迷う彼らの姿を見届ける時間は、プレイ後にもじんわりとした喪失感と余韻を残します。淡々とした診察作業の裏で感情を揺さぶってくるシナリオ構成は秀逸です。
体験版の段階では演出やテキスト表示のテンポ感などに一部改善の余地を感じる部分もありますが、それを補って余りある強い世界観とテーマ性の引力を持った作品です。

本作はこんなプレイヤーにオススメ
- 『VA-11 Hall-A』や『Citizen Sleeper』『Mind Scanners』のような、ディストピア×対話・作業シミュレーションが好きな方
- どこか切なく、物悲しい雰囲気の物語やサイバーパンクの叙情詩に浸りたい方
- ピクセルアートと丁寧な心理描写が融合したインディーアドベンチャーを求めている方

ゲーム概要
- タイトル: All Our Broken Parts(愛とロボット修理技術)
- 開発元: 锡鸟 Tin Bird
- パブリッシャー: GCORES PUBLISHING
- 発売日: 未定(体験版配信中)
- ジャンル: 物語主導型ロボット医療シミュレーション / アドベンチャー
- 対応言語: 日本語字幕対応(他多言語対応)
- ストアページ: https://store.steampowered.com/app/3473430/_All_Our_Broken_Parts/







