かつて『アサシン クリード』や『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』でゲーム史に名を刻んだクリエイター、パトリス・デジーレ氏。彼が長年にわたり構想を温め続け、数々の紆余曲折を経てついに世に送り出した最新作『1666: Amsterdam』が、PC向けに早期アクセスを開始した。
舞台は17世紀オランダの黄金期。繁栄の影で蠢く魔術と超常の力、そして黒猫との奇妙なバディワークを描いた本作を、実際にプレイした所感を交えてレビューする。
光と影が交錯する17世紀アムステルダムの濃密な世界観

ゲームを立ち上げ、街へ一歩足を踏み入れた瞬間に目を奪われるのは、徹底して作り込まれた17世紀アムステルダムの陰影豊かな景観だ。運河沿いに整然と立ち並ぶゲーブルストーンの切妻屋根、薄暗い路地に差し込むランタンの光、重厚なレンガ造りの家々。単なる舞台装置を超え、歴史の息づかいとオカルトの不穏さが同居した見事な美術設計が施されている。
プレイヤーが操作するのは、魔女の血筋「ザインダリス」に育てられ、借り物の力を行使し続ける存在「オリジナルス」から魔力を回収する宿命を背負った女性・ノア。街の民衆の中に溶け込み、人間の皮を被った怪異の正体を暴いていくという設定は、ダークファンタジー好きにはたまらない求心力を持っている。
人と猫を切り替える独自の「足取り」と調査ループ

ゲームサイクルの根幹を成すのは、昼と夜の二面性だ。
日中は魔女の気配を消し、普通の市民として街を歩きながら「オリジナルス」の真名や手掛かり、力の源となるアーティファクトを特定していく。過度なマーカー誘導に頼らず、人々の会話に耳を澄ませ、日記を拾い読みし、環境そのものを読み解いていく調査スタイルは、硬派なアドベンチャーの味わいがある。
ここで唯一無二の役割を果たすのが、1999年から召喚され黒猫の体を借りている相棒「アーロン」の存在だ。
ノアの姿では侵入できない狭い換気口や高所の窓へは、アーロンに操作を切り替えることで進入可能となる。鍵を外側から外したり、重要アイテムを盗み出したり、時には猫を恐れる人間に威嚇を仕掛けて誘導・憑依したりと、種族の違いを活かした潜入アクションが非常に小気味よい。人目を忍びながら屋根伝いに侵入経路を探し、パズルピースを嵌めていくような潜入プロセスは、本作ならではの際立った面白さだ。
儀式「エスバット」で訪れる夜の狩りと課題

ターゲットの情報を揃え、夜の帳が下りると「エスバット」が幕を開ける。人間の姿を脱ぎ捨てたオリジナルスと直接対峙し、魔術を用いてその力を奪還する決戦のフェーズだ。
ただし、現時点の早期アクセス版において、この戦闘面には明らかな粗削りさが残る。
魔女という強力な設定とは裏腹に、直接的な戦闘手段は近接の打撃とステップ回避が中心で、やや単調になりがちだ。ボスクラスの敵は攻撃力が高く、わずかなミスで窮地に立たされる一方で、プレイヤー側が取れる呪文やアプローチの選択肢が限られており、魔術師らしいダイナミックな攻防には今一歩届いていない印象を受ける。
また、カメラワークの挙動やジャンプ時の判定、一部の環境負荷によるフレームレートの乱れなど、操作性と最適化の面でも今後のアップデートによるブラッシュアップが待たれるところだ。
荒削りながらも宿る確かなポテンシャル

粗さはあるものの、散りばめられたアイデアの輝きは本物だ。チャプターごとにランダム性を取り入れつつ構築していく契約とスキル強化の仕組みや、時代を超えて交錯するミステリアスなストーリーテリングは、プレイヤーを先へ先へと牽引する力を持っている。
「決められたレールをただ走るだけの大作」に飽き足らず、独特の手触りを持った実験的な意欲作に触れたいゲーマーにとって、本作が放つ怪しい魅力は見過ごせないはずだ。開発陣がコミュニティのフィードバックを受け止めながら完成へと近づけていく過程そのものも含め、今後の進化に強く期待したい。
本作をオススメできるプレイヤー

- 中世ヨーロッパの歴史、魔女狩りやオカルト伝承といったダークな世界観を愛する人
- 派手なアクションよりも、自らの観察眼で手がかりを集めて真相に迫る調査型ADVが好きな人
- 猫の視点を活かした潜入やステルスギミックに惹かれる人
- 早期アクセス特有の荒削りさを受け入れ、開発途中のプロジェクトが化けていく過程を楽しめる人
ゲーム概要
- タイトル:1666: Amsterdam
- 開発元:Panache Digital Games
- パブリッシャー:Panache Digital Games
- 発売日:2026年8月25日(早期アクセス)
- プラットフォーム:PC(Steam / Epic Games Store)
- 価格:¥ 3,850(USD 29.99)
- 言語対応:日本語字幕対応(音声:英語)
- ストアリンク:Steamストアページ

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