ハックアンドスラッシュ(ハクスラ)の代表格である『Diablo』や『Path of Exile』の奥深いビルド構築と、ハイテンポなアクションで人気を博した『Hades』のようなローグライク。この二つの「時間泥棒」ジャンルを融合させるという、野心的なコンセプトを掲げているのが『Hell Clock』
Steamのレビューを見ると、その評価は「賛否両論」。多くのプレイヤーが「中毒性がヤバい」「時間を忘れて遊んでしまう」と絶賛の声を送る一方で、「バランスが悪い」「エンドコンテンツの仕様に納得できない」といった手厳しい意見も少なくない。
『Hell Clock』とは? — 時間と戦うハクスラ・ローグライク

本作の舞台は、19世紀末のブラジルで実際に起きた内戦「カヌードス戦争」をモチーフにしたダークファンタジー世界。共和国軍による虐殺で2万5千人もの命が失われたという、ブラジルの歴史の暗い一章が描かれる。プレイヤーは生き残った戦士「パジェウ」となり、師の首を奪いその魂を閉じ込めた闇の軍勢に立ち向かうため、時間を歪めるダンジョンの深みへと挑むことになる。
特筆すべきは、この重厚な史実を背景にした世界観と、非常に評価の高いポルトガル語のフルボイス。これらが織りなす雰囲気は、他のゲームにはない独特の没入感を生み出している。
ゲームの基本的な流れ。

- ダンジョンへ突入: ダンジョン内では常に「ヘルクロック」と呼ばれるタイマーが作動しており、時間内にできるだけ深く潜り、敵を倒し、装備や強化素材を集めることが目的となる。
- 戦闘と強化: 戦闘は『Diablo』ライクな見下ろし型のアクション。道中で手に入る強化要素で一時的にキャラクターをパワーアップさせながら、各階層のボス撃破を目指す。
- 拠点での永続強化: ダンジョンで得たリソースを使い、拠点ではスキルツリーや装備の強化といった「永続的な」アップグレードを行う。これにより、プレイヤーは挑戦を繰り返すたびに着実に強くなっていく。
この「挑戦→永続強化→再挑戦」というローグライクのサイクルに、ハクスラの根幹である「装備(レリック)を集めてビルドを構築する楽しみ」が加わっているのが、本作最大の特徴だ。
また、プレイヤーが自分に合ったプレイスタイルを選べるのも魅力の一つ。時間制限をプレッシャーに感じるなら、それを取り払う「リラックスモード」でじっくり探索できる。逆に、極限の挑戦を望むなら、一度のミスも許されない「ハードコアモード」で己の限界に挑むことも可能だ。
なぜハマる?本作の「中毒性」を生む3つの魅力
レビューで称賛されているのは、プレイヤーを沼に引きずり込む、巧みに設計されたゲームシステムだ。
魅力その1:ビルド構築の沼にハマる「聖遺物」システム

本作のビルド構築の核となるのが「聖遺物(Relic)」と呼ばれる特殊な装備品だ。これは単なるステータスアップに留まらず、「特定のスキルが自動で発動するようになる」「攻撃が連鎖するようになる」など、スキルの性能や挙動そのものを劇的に変化させる効果を持つ。
どのスキルを主軸に、どの聖遺物を組み合わせるか。この試行錯誤こそが『Path of Exile』や『Grim Dawn』といったハクスラ作品の醍醐味であり、『Hell Clock』はこの点を非常によく理解している。レビューでは「この組み合わせを考えている時が一番楽しい」「理想のビルドが完成した時の爽快感は格別」といった声が多数見られた。
魅力その2:爽快感とスピード感を両立した戦闘
時間制限があるため、本作では必然的に「いかに早く敵を殲滅できるか」が重要になる。このゲームデザインが、立ち止まって殴り合うような退屈な戦闘を排し、常に動き回りながらスキルを叩き込む、スピーディーでアグレッシブなプレイスタイルを推奨している。
ヒットエフェクトやサウンドも気持ちよく調整されており、「ただ敵を倒しているだけで楽しい」という、アクションゲームとしての根源的な快感をしっかりと満たしてくれる。
魅力その3:丁寧なローカライズと世界観
ブラジルの史実というニッチなテーマでありながら、日本語翻訳の質は非常に高いと評価されている。一部にテキストの不整合は残るものの、物語やシステムを理解する上で支障はない。
特に、感情のこもったポルトガル語のフルボイスは多くのプレイヤーから絶賛されており、本作の重厚で悲壮感漂う世界観への没入感を格段に高めている。
購入前に知るべき「人を選ぶ」3つの課題
一方で、『Hell Clock』が「賛否両論」である理由もまた明確だ。特に以下の3点は、プレイヤーの好みを大きく分ける要因となっている。

課題その1:突然訪れる「絶望的な壁」という名のバランス
最も多くのレビューで指摘されているのが、敵の強さの急激なインフレだ。特に、章の区切りとなるボスを倒し、次のステージに進んだ途端、それまで通用していたビルドでは全く歯が立たないほど敵が硬くなる。
これは「周回して永続強化を重ねることを前提としたデザイン」なのだが、その上昇曲線があまりに急なため、多くのプレイヤーが「理不尽な壁」と感じてしまっている。「ロード画面では『周回前提ではない』と表示されるのに…」という皮肉めいたレビューも見られるほどだ。
課題その2:全てがリセットされる「エンドコンテンツ」の仕様
キャンペーンをクリアしたプレイヤーを待ち受けるエンドコンテンツ。ここで本作は、非常に大胆な、そして物議を醸すシステムを提示する。それは「聖遺物や装備、永続強化の大部分をリセットし、より厳しい条件下で再び最初から攻略する」というものだ。
これは、毎回新鮮な気持ちでビルド構築を楽しんでほしいという、ローグライクの思想に根差したデザインだろう。実際に「この仕様こそが面白い」と評価するハードコアなファンもいる。
しかし、何十時間もかけて集め、強化した愛着のある装備やキャラクターが白紙に戻る体験は、ハクスラジャンルの「一つのキャラクターを極限まで育て上げる」という楽しさを期待していたプレイヤーにとっては、大きな失望とストレスになっている。「魂が抜けるような体験だった」というレビューは、その衝撃を的確に物語っている。

課題その3:快適なプレイを阻むいくつかの問題
ゲームの根幹ではないが、プレイを続ける上でストレスとなる点が複数報告されている。
- 聖遺物の整理・検索機能の欠如: ビルド構築の要である聖遺物だが、数が増えてくると管理が非常に煩雑になる。ソートや検索機能がないため、目当てのものを探すだけで一苦労だ。
- 視認性の悪さ: 赤を基調とした背景に、プレイヤーと敵の赤いエフェクトが重なり、「何が起きているか分からない」状況が頻発する。特に雷エフェクトなどは「目に痛い」という意見も。
- 長いロード時間とパフォーマンス: 拠点に戻る際のロードが長い、エフェクトが重なるとフレームレートが低下するなど、最適化不足を指摘する声も多い。
結論:あなたは『Hell Clock』を楽しむことができるか?
ここまで見てきたように、『Hell Clock』は尖った魅力と、それと同じくらい尖った課題を併せ持つゲームだ。まさに「デジタルヘロイン」と感じるプレイヤーもいれば、「苦行」と感じるプレイヤーもいるだろう。

▼こんなあなたには「強くおすすめ」
- 『Diablo』や『Path of Exile』のようなビルド構築に喜びを感じる人
- 『Hades』のように、何度も死んで少しずつ強くなる過程を楽しめる人
- 開発途上の荒削りな部分も「味」として受け入れ、自分なりの攻略法を見つけ出すのが好きな人
▼こんなあなたは「慎重に検討」を
- コツコツ育てた最強のキャラクターで無双したいハクスラファン
- 理不尽な難易度上昇や、強制的なやり直しに強いストレスを感じる人
- ゲームを快適に遊ぶための最適化を重視する人
ゲーム概要
- タイトル: Hell Clock
- ジャンル: ハクスラ / ローグライクアクションRPG
- リリース日: 2024年7月22日
- 価格: 2300円
- 日本語字幕: 対応
- プラットフォーム: PC (Steam)
- ストアページ: https://store.steampowered.com/app/1782460/Hell_Clock/
『Hell Clock』は、万人に手放しで勧められる優等生ではない。しかし、その荒削りな魅力に心を射抜かれてしまえば、他に類を見ないほど深く、長くのめり込めるポテンシャルを秘めた怪作であることは間違いない。興味を持った方は、まずデモ版から試してみてはいかがだろうか。






