太陽が失われ、終わりなき夜が続く世界。生者と死者が対立するその場所で、ゾンビの少年「グルーミー」と人間の少女「ニーナ」が出会う。2025年9月12日にリリースされた『Gloomy Eyes』は、そんなふたつの魂が織りなす、切なくも美しいパズルアドベンチャーだ。ティム・バートンの作品を彷彿とさせるゴシックな世界観の中で、禁断の絆が紡がれていく。
絵本が動き出す、ジオラマの世界

本作を起動してまず息を呑むのは、その独創的で美しいビジュアルだ。まるでストップモーションアニメがそのままゲームになったかのような、温かみのある質感が画面全体を包み込む。各ステージは精巧に作られたジオラマ(箱庭)であり、プレイヤーは視点を自由に回転させ、まるで手の中のスノードームを覗き込むように、この世界を隅々まで堪能できる。
血や直接的な恐怖表現に頼らず、光と影のコントラスト、そして心に寄り添うような音楽で「コージーホラー」とでも言うべき独特の雰囲気を醸成している。墓守の老人が語り部として物語を導く演出も秀逸で、プレイヤーはダークで幻想的な絵本を読み聞かせてもらっているかのような、不思議な没入感に引き込まれていく。
ふたつの心をひとつに。独創のパズル体験

ゲームの核となるのは、プレイヤーが一人でグルーミーとニーナを交互に操作する「一人協力」プレイだ。光を浴びると動けなくなるグルーミーと、人間ならではの身軽さで機械を扱えるニーナ。彼らの特性は、パズルを解く上で互いを補い合うように設計されている。
例えば、グルーミーが日陰で重いオブジェクトを動かしてニーナの道を作り、ニーナがその先でレバーを操作してグルーミーのための新たな日陰を生み出す。こうした連携が不可欠であり、二手三手先を読みながらギミックを解き明かした時の思考の快感は格別だ。キャラクターを切り替えるという一手間が、もどかしくも、二人のキャラクターへの深い愛着へと繋がっていく。パズルは決して理不尽に難しいわけではなく、観察力とひらめきを試す絶妙なバランスに調整されている。
言葉を超えた、心温まる物語

本作の物語は、セリフに頼らず、キャラクターたちの行動や表情、そして世界の情景を通して語られる。最初は互いを警戒していたグルーミーとニーナが、困難を共に乗り越える中で、次第に信頼を寄せ合い、かけがえのない存在となっていく。その過程は、言葉がなくとも痛いほど伝わってくる。
手を差し伸べる仕草、危険から互いをかばい合う姿。そうした細やかな演出が、生者と死者という決して交わらないはずの二人の間に芽生える絆を丁寧に描き出し、プレイヤーの心を静かに、そして強く揺さぶる。これは単なるパズルゲームではない。断絶された世界で希望を見出す、愛の物語なのだ。
総評:短くも、深く記憶に刻まれる珠玉の一作

時に意地悪な固定カメラの角度や、わずかな操作性の癖といった細かな欠点がないわけではない。また、クリアまで4〜5時間というプレイ時間は、壮大な冒険を求めるプレイヤーには物足りなく映るかもしれない。
しかし、それは冗長な引き延ばしを一切排した、濃密で質の高い体験の裏返しでもある。本作は、一本の優れたアートフィルムを鑑賞するような、贅沢な時間を提供してくれる。この独創的なアートスタイル、心温まる物語、そして他にはないパズル体験は、唯一無二の価値を持つ。ティム・バートン作品のようなゴシックでファンタジックな世界観が好きな人、そして心に残る物語を求めるすべての人に、自信を持っておすすめしたい一作だ。

ゲーム概要
| タイトル | Gloomy Eyes |
| 日本語タイトル | グルーミーの瞳 |
| 発売日 | 2025年9月12日 |
| 開発元 | Fishing Cactus |
| パブリッシャー | ARTE France, Untold Tales |
| 価格 | PC/Xbox: 2,800円~, PS5: 3,630円 |
| ストアURL | Steam PlayStation Store Xbox |
| 日本語対応 | 字幕対応 |







