「またTarkov系か」と思っただろう。
Gaijin Entertainmentが手がける新作SFホラーFPS『Active Matter』は、単なる“脱出シューター”ではない。そこに広がるのは、『S.T.A.L.K.E.R.』的な放射性の緊張感と、SCP的な概念ホラーが融合した、常識の通じない戦場だ。
本作は現在アーリーアクセス段階(2025年10月時点)にありながら、既に“異質な完成度”を放っている。
量子異常に侵されたゾーン――「空間そのもの」と戦うFPS

プレイヤーは「オペラティブ」と呼ばれる工作員となり、量子異常が蔓延する閉鎖空間「ゾーン」に潜入。目的はただひとつ――貴重なエネルギー物質“アクティブマター”を回収し、生きて脱出することだ。
しかし、この世界では物理法則が信用できない。
重力が突如反転し、床だった場所が天井になる。建物の壁が液体のように歪み、新たな通路を形成する。銃弾の軌道すら狂い、敵の位置感覚が失われる。“空間そのものが敵”として立ちはだかるこの感覚は、他のFPSには存在しない。一瞬先に何が起こるか分からない。そんな極限の不安が、プレイヤーの五感を研ぎ澄ませる。『Active Matter』が生み出すのは、ホラーでもSFでもなく、量子的な恐怖体験なのだ。
PvPvEが織りなす“三つ巴の地獄”

このゾーンには、敵対プレイヤーとAIクリーチャー、そしてプレイヤー自身――三者が存在する。PvPとPvEが交錯し、時に環境までもが第三勢力として戦闘に介入してくる。
たとえば、敵プレイヤーを追い詰めた瞬間に重力が反転し、双方が宙に浮かびながら撃ち合う。あるいは、物陰で息を潜めていると、背後から異形生命体が奇声を上げて襲いかかる。それら全てが一瞬で戦況をリセットし、別の物語を紡ぎ始める。漁夫の利を狙おうとしたら、プレイヤーもろともアノマリーに飲み込まれる――そんな理不尽さすら“この世界の理”として成立しているのが恐ろしい。
敗北すら快感に変わる、常軌を逸した中毒性

正直に告白すると、筆者はこの原稿を書いている時点で、30回以上連続でゾーンから生きて帰れていない。装備もアイテムもすべて失い、何度も無力感に打ちのめされた。だが、不思議なことに心は折れていない。むしろ「次こそは」と、吸い寄せられるように再び潜ってしまうのだ。
この異常な中毒性の根源は、本作の巧みなゲームデザインにある。脱出に失敗しても、最低限の装備を無料でレンタルできる「プリセット」機能が、再挑戦への心理的ハードルを劇的に下げてくれるのだ。「すべてを失う」恐怖を和らげ、プレイヤーに「死」を罰ではなく「学習」の機会として捉えさせる。
昨日まで理不尽に感じていた重力反転を、今日は敵の裏をかくためのチャンスとして利用する。クリーチャーの出現位置を覚え、先手を打って切り抜ける。そうしてほんの少しだけ生存時間が延びた瞬間、脳内にアドレナリンが駆け巡る。このゲームでは、華々しい勝利よりも、地を這うような敗北の果てに見えるわずかな「上達」こそが、最高の報酬なのである。
銃撃の“重さ”とSF的カスタマイズ

銃撃戦はシミュレーション寄りで、リコイルや弾道落下、発砲音の重量感まで緻密に再現されている。
一方で、SF要素が絶妙に組み込まれており、たとえば「時間干渉モジュール」を装着すれば弾道を一瞬遅延させられるなど、現実と非現実の狭間にある戦術が可能だ。武器バリエーションはまだ限られるが、モジュールやデバイスの挙動が緻密で、研究するほどに新しい戦い方が見えてくる。
荒廃と異常の美学――グラフィックが語る“量子の狂気”

グラフィックはロシア系開発らしい硬質なライティングと、SFホラー的な色彩処理が印象的だ。特にアノマリーゾーン突入時、建築物が歪み、空気が波打ち、光が粒子状に散る様は圧巻。
不安定だからこそ美しいという表現が、まさにこの作品にふさわしい。最適化が進めば、さらなる没入体験が期待できる。
迫る競合と『Active Matter』が生き残る道

しかし、この異質な傑作の未来は決して安泰ではない。10月末には『ARC Raiders』が、11月上旬には本家『Escape from Tarkov』がSteamでリリースされるなど、脱出シューター市場は熾烈な戦場と化す。その中で『Active Matter』が確固たる地位を築くには、「量子異常」という唯一無二の個性をさらに先鋭化させる必要があるだろう。
筆者からの提案は3つだ。
- ソロプレイモードの正式実装: 現在のチームプレイとは別に、孤独にゾーンの異常性と対峙する体験は、必ずや新たなプレイヤー層を惹きつける。ただ敵と戦うだけでなく、ホラーサバイバルとしての側面を強化するのだ。
- “概念的”アノマリーの追加: 重力反転や空間歪曲に加え、「同じ区間がループする」「音が数秒遅れて聞こえる」といった、より五感を狂わせる概念的な異常を導入すれば、他作品では絶対に味わえない独自性が生まれる。
- 非戦闘的な脱出条件の導入: “アクティブマター”の回収だけでなく、「特定のアノマリーの発生を記録する」「ゾーンの謎に繋がる遺物を持ち帰る」といった調査・探索目的の脱出を可能にすることで、戦闘が苦手なプレイヤーにも門戸が開かれるはずだ。
総評:混沌を愛せる者に捧ぐ、異常な傑作の胎動
『Active Matter』は、『Escape from Tarkov』のコピーでも、『S.T.A.L.K.E.R.』の再来でもない。それは、“環境そのものが敵”という新たな概念を提示し、敗北の味さえもプレイの喜びに変えてしまう、ジャンルの境界を破壊する挑戦作だ。
確かにまだ粗削りで、最適化やコンテンツ拡張の余地は大きい。だが、ここまで“狂気をプレイアブルにした”FPSは他に存在しない。2025年の正式リリースでこの異常空間がどこまで進化するのか――その過程すら、我々プレイヤーにとっての刺激的な実験となるだろう。
ゲーム概要
- タイトル: Active Matter
- ジャンル: SFホラー脱出シューター
- 開発/販売: Gaijin Entertainment
- プラットフォーム: PC (Gaijin.Netの専用ランチャー)
- リリース日: 2025年9月9日アーリーアクセス
- 日本語未対応(アーリーアクセス時点)※タルコフ好きなら問題ないだろう
- 価格: 4,499円~
- 公式サイト: https://activematter.game/en
- Steam&コンソール版発売日:2025年予定?
- Steam:https://store.steampowered.com/app/2887580/Active_Matter/






