最近、PCに向かって大声で叫んだのはいつだろうか。ホラーゲームで驚いたとき? いや、対戦ゲームで撃ち負けたときかもしれない。だが、このゲームにおいては、絶叫こそが「攻略法」であり、唯一の「ブレーキ」だ。
今回紹介するのは、BiG INC. CO. LLC.が開発・販売を手掛ける『Goblintown: Really Hard Driving Game』。タイトルにある通り、「本当に難しいドライブゲーム」である。ジャンルはいわゆる「登る系」。『Only Up!』や『Getting Over It』の系譜に連なる、高難易度物理演算アクションだ。ただし、操作するのは人間ではなく、挙動の怪しい車である。
ハンドルを握り、アクセルを踏み、そしてマイクに向かって叫ぶ。そんなカオスなドライブ体験がここにある。
物理演算の「悪意」と向き合うドライブ

本作の目的は至ってシンプルだ。危険な障害物がひしめくゴブリンタウンの頂上まで、荷物を届けること。ただそれだけだ。しかし、その道程は険しいなんてものではない。
プレイヤーが操作するトラックは、まるでタイヤがゴムまりでできているかのように跳ね、滑り、転がる。アクセルを踏めばウィリーし、カーブを曲がれば横転する。この「もどかしい操作性」こそが本作の醍醐味であり、同時に最大のストレス源でもある。
コース設計も秀逸なまでに意地が悪い。わずかな段差、回転するギミック、突然の爆発物。一瞬の気の緩みが、数十分の進捗を無に帰す落下へと繋がる。「登る系」特有の、あの胃がキリキリする感覚。落ちていく車体を見つめながら、「あああああ!」と声が出る。だが、本作においてその声は無駄にはならない。
「叫び」が時を止める、画期的なマイク入力システム

このゲーム最大の発明、それは「マイク入力によるタイムスロー」機能だ。
プレイヤーがマイクに向かって叫ぶと、ゲーム内の時間がスローモーションになる。空中に放り出された瞬間、バランスを崩して崖から落ちそうな瞬間、マイクに向かって絶叫することで、わずかな猶予が生まれるのだ。その間に体勢を立て直し、奇跡の着地を決めることができるかもしれない。
深夜の自室でモニターに向かって奇声を上げる姿は、客観的に見れば通報案件かもしれない。しかし、プレイしている当人は必死だ。この「叫ぶ」という身体的アクションがゲームプレイに組み込まれることで、没入感と必死さが段違いに跳ね上がる。成功した時の安堵感は、深呼吸とともに訪れる。まさに「ゴブリンモード」とでも言うべき没入体験だ。
独特な美的センスと中毒性

ビジュアルは、エド・ロス(ラットフィンクの生みの親)のイラストを彷彿とさせるような、グロテスクかつコミカルなカートゥーン調で統一されている。色使いはサイケデリックで、BGMも妙に耳に残る。車体から放たれるニトロが「屁」のような音とエフェクトだったりと、全体的に下品でカオスな雰囲気が漂うが、それがこの理不尽な難易度と妙にマッチしている。
リトライは苦行だが、ショートカットを見つけた時の快感や、新しい奇抜な車両をアンロックした時の喜びが、プレイヤーを再びスタート地点へと向かわせる。グローバルリーダーボードで世界中のプレイヤーとタイムを競うのもいいだろう。
総評:580円で買える「上質なストレス」

『Goblintown』は、決して万人に勧められるゲームではない。操作は独特で慣れが必要だし、理不尽な落下に耐性がないとモニターを破壊したくなるかもしれない。一部のチェックポイント間の距離や、特定のギミック(加速床など)の挙動には荒削りな部分も見受けられる。
しかし、この価格でこれだけの「感情の揺れ動き」を提供してくれるゲームは稀有だ。失敗して絶叫し、成功して歓喜の声を上げる。マイク機能を使えば、その両方がゲームプレイの一部となる。もしあなたが、自分の限界に挑むことが好きで、多少の理不尽さを笑って許せる広い心(あるいは強靭な喉)を持っているなら、このゴブリンタウンへの片道切符を買ってみてはいかがだろうか。
ただし、プレイする際は近所迷惑にならないよう、防音対策だけは忘れずに。
ゲーム概要
- 開発元: BiG INC. CO. LLC.
- パブリッシャー: BiG INC. CO. LLC.
- 発売日: 2025年4月30日
- 価格: 580円
- ジャンル: 物理演算プラットフォーマー / レース
- プラットフォーム: PC (Steam)
- 日本語対応: 未定
- ストアリンク: https://store.steampowered.com/app/3417510/Goblintown_Really_Hard_Driving_Game/






