「自由、平等、友愛」。あるいは「死」。 1794年、パリ。革命の熱狂は恐怖政治へと変わり、ギロチンの刃が血に濡れない日はなかった。誰もが隣人を疑い、昨日の英雄が今日の反逆者となる混沌の時代。
今回紹介する『We. The Revolution』は、そんな激動のフランス革命期を舞台にした一風変わったアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは革命裁判所の判事「アレクシス・フィデル」となり、次々と送られてくる被告人を裁くことになる。しかし、これは単なる法廷シミュレーションではない。自らの首を守り、家族を守り、そしてあわよくば権力の座へと登りつめるための、血で血を洗う政治闘争の物語なのだ。
正義とは何か、そして生き残るとはどういうことか。筆者が体験した、極限状態での判決の日々をここに記そう。
法廷は正義の場にあらず。命を懸けた「政治的」判決

本作のメインとなるのは裁判パートだ。事件の調書を読み込み、証拠や証言からキーワードをリンクさせて質問をアンロックし、被告人を尋問する。ここまでは『逆転裁判』のような推理ゲームを想像するかもしれない。だが、本作の目的は「真実を暴くこと」ではない。「誰もが納得する(あるいは誰も激怒させない)判決を下すこと」だ。
法廷には常に複数の勢力の視線が注がれている。過激な判決を求める「革命派」、情状酌量を望む「民衆」、そして伝統を重んじる「貴族」たち。さらには陪審員の心証や、検察官の顔色まで伺わなければならない。 ある被告人を無罪にすれば民衆は喜ぶが、革命派からは「裏切り者」と見なされ、自身の評価が下がる。評価が下がりすぎれば、待っているのは解任、そしてギロチンだ。

「こいつは明らかに無実だ……だが、今ここで無罪を出せば私の首が飛ぶ」。 そんな葛藤の中で、涙を飲んで死刑判決書に署名し、自らギロチンの紐を引く(実際にマウスで引く操作がある!)。その時の「やってしまった」という罪悪感と、「これで今日も生き延びた」という安堵感が入り混じった奇妙な感覚は、本作でしか味わえない強烈な体験だ。
家族すらも政治の道具? 息詰まる駆け引きとパリの支配

裁判所の外でも戦いは続く。家に帰れば、父親を軽蔑する息子や、政治的立場の違う妻との会話が待っている。家族との関係もまた、主人公のステータスや各勢力への影響力に直結するリソースなのだ。家族団らんの時間さえも、翌日の裁判を有利に進めるための布石に過ぎないのかと自問自答してしまう。
また、物語が進むとパリ市内の支配権を争う戦略パートも登場する。政敵を追い落とすための裏工作や演説、暴動の鎮圧など、判事の枠を超えた権謀術数に手を染めることになる。 最初は単なる保身だったはずが、いつしか「私がフランスを導かねばならない」という歪んだ使命感に変わっていく。権力という怪物の恐ろしさを、身をもって体験することになるだろう。
独特なポリゴンアートが描く、美しくも残酷な革命の真実

本作を語る上で欠かせないのが、その卓越したビジュアルセンスだ。 ポリゴンを荒削りにしたような独特のアートスタイルは、冷たく無機質でありながら、血生臭い革命のリアリティを妙に生々しく伝えてくる。クラシック調の重厚なBGMも相まって、プレイ中は常に薄暗い曇り空の下にいるような、閉塞感と緊張感に包まれる。
ロベスピエールやダントンといった歴史上の人物も登場し、彼らとの対話(あるいは対決)も歴史好きにはたまらない要素だ。英語のみの対応(日本語なし)ではあるが、当時の雰囲気を感じ取るには十分すぎるほどの没入感がある。
総評:歴史の濁流に吞まれるか、泳ぎ切るか

『We. The Revolution』は、決して「スカッとする」ゲームではない。むしろ、ストレスとジレンマに胃を痛めるゲームだ。しかし、その苦しみこそが、あの時代のパリを生きた人々の感覚そのものなのかもしれない。
あなたは自身の良心に従って断頭台へ送られるか、それとも手を血に染めて歴史に名を残すか。 道徳的ジレンマと政治的駆け引きに飢えているなら、この裁判長の席に座ってみることを強くおすすめする。ただし、判決を下す際はくれぐれも慎重に。次に首を落とされるのは、あなたかもしれないのだから。
ゲーム概要
- 開発元: Polyslash
- パブリッシャー: Valkyrie Initiative
- 発売日: 2019年3月21日
- 価格: 2,300円
- ジャンル: ストラテジー / シミュレーション / アドベンチャー
- プラットフォーム: PC (Steam)
- 日本語対応: なし
- ストアリンク: https://store.steampowered.com/app/736850/We_The_Revolution/






