犬が魔女で、ダイスを振って戦う。字面だけ見ると、ほのぼのとしたインディーゲームを想像するかもしれない。2025年11月6日にSteamでリリースされたHeckmouse開発の『DOG WITCH』は、確かにその入り口は驚くほどキュートだ。
だが、一歩足を踏み入れれば、そこは『Slay The Spire』の緻密な戦略性と『Dicey Dungeons』のスリリングな運要素を併せ持つ、シビアなローグライクの世界が広がっていた。本作が持つ独特の魅力と、その中毒性の源泉をレビューしていこう。
ダイスを「育て」、シナジーを「組む」戦略性

本作は、ローグライク・デッキビルダーならぬ「ダイスビルダー」だ。プレイヤーは犬魔女となり、ターンごとに振られるダイスを各アクションに割り当てて戦う。攻撃用の「杖」、特殊攻撃の「本」、防御の「骨」、強力な「呪文」など、どのリソースにダイスを割くか、瞬時の判断が求められる。
ここまではよくあるシステムだが、『DOG WITCH』の真価は「ダイスの面のアップグレード」と「150種以上のアーティファクト」にある。戦闘に勝利すると、ダイスの基本的な面を、より強力な効果を持つ面(例:「骨」3つ分、召喚ゲージ+2など)にアップグレードできるのだ。
さらに、9つの装備スロット(本、杖、呪い、リング、召喚獣など)にセットするアーティファクトとの組み合わせが、爆発的なシナジーを生み出す。「召喚するたびにシールドを得る」アイテムと、「ダイスの出目に関わらず召喚できる」呪文を組み合わせるような、コンボ構築の楽しさは無限大だ。
奇妙で愛おしい。「ぽっちゃり度」まで弄れる世界観

本作の魅力は、その戦略性だけにとどまらない。Heckmouseが描く世界は、幻想的でどこかトリッピー。BGMはチルで心地よく、プレイヤーを「フロー状態」へと誘う。
登場する敵も「銃を構えるマトリョーシカ」や「復讐に燃える猫好き婦人」など、一筋縄ではいかない連中ばかり。対するこちらも「レーザーポニー」や「銃持ちネズミ」といった奇妙な仲間を召喚して応戦する。この独特のセンスがたまらない。
そして何より、主人公の「犬魔女」だ。毛並み、帽子、吠え声、そしてなんと「ぽっちゃり度」までスライダーで自由にカスタマイズできる。この時点で開発チームが「わかっている」と確信した。クリックすれば可愛く吠えてくれるこの相棒と共に、混沌とした世界へ挑むのだ。
これは「運ゲー」か、それとも「戦略」か?

本作をプレイする上で、避けて通れないのが「RNG(運)」の強さだ。コミュニティのレビューでも賛否が真っ二つに分かれている。
事実として、本作のRNGは過酷だ。「防御(骨)のビルドを組んだのに、3回リロールしても骨の目が一つも出ない」といった事態は日常茶飯事。敵の苛烈な攻撃の前に、なすすべもなくランが終了することも一度や二度ではない。
だが、50時間以上プレイしたベテランテスターたちが語るように、それこそが本作の「戦略」でもある。RNGが荒ぶることを前提とし、いかにリスクを分散させるか。攻撃、防御、召喚、呪文…どれか一つに特化するのではなく、あらゆる状況に対応できる「多様性」を確保することが、このゲームの攻略法なのだ。
1ランが15分程度と非常に短時間で終わるテンポの良さも、このシビアなRNGと噛み合っている。運に見放されて負けても、「もう一回!」とすぐに次の冒険へ旅立てる。この手軽さが、恐ろしい中毒性を生み出している。
総評:ローグライクの「旨味」が詰まった、時間泥棒の逸品

『DOG WITCH』は、ローグライクのジャンルに飽きかけたベテランにこそ刺さる、奥深い一作だ。もちろん、分かりやすいルールとキュートなビジュアルは、ジャンルの入門用としても最適だ。
RNGの強さというハードルはあるものの、それを乗り越えて強力なシナジーが組み上がった時の快感は、何物にも代えがたい。1,200円という価格で、この幻想的な世界と底なしの戦略性を味わえるなら、コストパフォーマンスは最高レベルと言える。
日本語字幕にもしっかり対応しており、デモ版も用意されている。この奇妙で魅力的な「犬魔女」の世界に、ぜひ一度飛び込んでみてほしい。
ゲーム概要
- タイトル: DOG WITCH
- 開発元: Heckmouse
- パブリッシャー: Mystic Forge
- プラットフォーム: PC (Steam)
- 発売日: 2025年11月6日
- 価格: 1,200円
- 日本語: 字幕対応
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/3548520/DOG_WITCH/







