サイバーパンクな世界観と、探偵、そしてハッカー。この3つの要素が絡み合う作品には、抗いがたい魅力がある。今回紹介する『Song of Farca』は、まさにそのツボを見事に押さえたアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは、ある事件をきっかけに自宅軟禁状態にある私立探偵兼ハッカー「イザベラ・ソング」となる。一歩も外に出られない彼女の武器は、PCとドローン、そして優秀なAIアシスタントのみ。
腐敗した巨大企業、暗躍する犯罪組織、そして迫りくる脅威。モニター越しに街を監視し、情報を盗み出し、真実にたどり着くことができるか。ドラマチックな物語とパズル要素が融合した本作の魅力をお届けする。
生活感とサイバー空間が同居する独特の画面構成

本作をプレイしてまず惹きつけられるのは、そのユニークな画面構成だ。 画面の上3分の1にはイザベラの自宅(リアル)が映し出され、下3分の2には彼女が操るPC画面(バーチャル)が表示される。
我々プレイヤーが下画面でハッキングやデータ解析に没頭している間も、上画面ではイザベラがコーヒーを淹れたり、愛犬と戯れたり、時には頭を抱えたりしている。この「生活感」と「冷徹なハッキング作業」の対比が、妙に生々しい没入感を生んでいるのだ。
特に愛犬の存在は大きい。殺伐とした事件を追う中で、ふと上を見ると犬が可愛い仕草をしている。これだけで「この平穏を守らねば」という謎の使命感が湧いてくる。自宅軟禁中という閉塞感の中で、この画面分割の演出は非常に効果的だ。
カメラジャックとドローン操作で証拠を掴む快感

ゲームプレイの核となるのは、ハッキングによる情報収集だ。 監視カメラに侵入し、死角にある別のデバイスをハッキングして視界を広げ、最終的に目的の情報や証拠品にたどり着く。また、時にはドローンを遠隔操作して物理的に狭い場所に潜入することもある。
これらはパズル形式になっており、難易度はそこまで高くはない。むしろ、次々とセキュリティを突破していくテンポの良さが、「自分は今、街全体を手のひらで転がしている天才ハッカーだ」という全能感を味わせてくれる。
複数の証拠を集め、そこから導き出される結論を推理し、容疑者を追い詰めていくプロセスは、往年の探偵ゲームの面白さを踏襲しつつ、現代的なアレンジが効いている。ただし、パズルのパターンは後半やや単調に感じるかもしれないが、物語の先が気になりすぎて、そこまで苦にはならないはずだ。
“ブラック・ミラー”を彷彿とさせるダークな物語と決断

開発元が「Black Mirror-esque(ブラック・ミラー的)」と謳うだけあり、ストーリーはかなりシリアスでダークだ。 巨大企業の陰謀や、技術の進歩がもたらす倫理的な問題が容赦なく描かれる。プレイヤーの選択は物語に影響を与え、時には取り返しのつかない結果を招くこともある。
「正義」とは何か。依頼人の利益を優先するのか、それとも真実を暴くのか。あるいは、自分の身を守るために非道な手段を取るのか。 AIアシスタント「モーリス」との皮肉の効いた会話劇も素晴らしく、彼(?)との関係性も物語の重要なスパイスとなっている。
日本語非対応である点が最大のハードルだが、英語テキストはそこまで難解ではなく、DeepLなどの翻訳ツールを傍らに置けば十分に楽しめるレベルだ。むしろ、英語のUIがハッカー気分をより盛り上げてくれるとポジティブに捉えたい。
総評:制限された空間だからこそ広がるイマジネーション

『Song of Farca』は、派手なアクションこそないものの、練り込まれた世界観とスタイリッシュなアートワーク、そして「覗き見る」背徳感と謎解きの達成感が見事に融合した良作だ。
自宅から一歩も出ずに世界を救う(あるいは破滅させる)という体験は、現代の我々にとってもどこか共感できる部分があるかもしれない。
サイバーパンクな世界でハードボイルドな探偵業を営みたい人、そして何より、仕事中に犬を愛でたい人には強くおすすめしたい一作だ。英語というファイアウォールを突破してでも、プレイする価値はある。
ゲーム概要
- タイトル: Song of Farca
- 発売日: 2021年7月21日
- 価格: ¥ 2,300
- 開発元: Wooden Monkeys
- パブリッシャー: Alawar
- ジャンル: アドベンチャー / シミュレーション / サイバーパンク
- 日本語対応: なし(英語のみ)
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/1435670/Song_of_Farca/







