現実世界における「引っ越し」は、面倒事の代名詞だ。荷造り、重い家具の運搬、そして新居での荷ほどき。考えるだけで気が滅入る。しかし、それがゲームになった途端、なぜこれほどまでに没頭してしまうのだろうか。
2026年1月16日にリリースされた『Moving Simulator』は、そんな不思議な魅力を秘めた引っ越し業者シミュレーションゲームだ。プレイヤーは自身の引っ越し会社を経営し、様々な依頼人の要望に応えていくことになる。今回は、実際にコントローラーを握り、仮想空間で汗水たらして働いてみた筆者による独自レビューをお届けしよう。
まずは、現場の雰囲気が伝わる公式トレーラーをご覧いただきたい。
段ボールと家具の山に挑む、肉体労働のリアルとカオス

ゲームの基本フローは非常にシンプルだ。オフィスで依頼を受け、トラックで現場に向かい、指定された荷物を梱包し、積み込み、新居へと運ぶ。文字にすれば数行で済むこの工程が、実際にはカオスの連続となる。
まず直面するのは、物理演算という名の魔物だ。巨大なソファやベッドを、狭い日本の住宅事情を思わせるような廊下やドアを通して運び出す必要がある。慎重に角度を調整しているつもりでも、家具が壁にめり込んだり、あらぬ方向へ吹っ飛んだりする様は、リアルなシミュレーションを超えてもはや上質なコメディだ。
最初は「お客様の大切な荷物だから…」と丁寧に扱おうとするが、次第にそんな殊勝な心掛けは消え失せる。「ええい、とにかくトラックに入ればいいんだよ!」と、半ばヤケクソ気味にパワープレイに走ってしまうのは筆者だけではないはずだ。スタミナの概念はあるものの、人間離れした怪力で冷蔵庫を軽々と持ち運べるゲーム的な許容範囲の広さが、このカオスな現場をストレスフルな作業ではなく、笑えるエンターテイメントに昇華させている。
シンデレラフィットの快感!トラック積み込みという名のパズル

本作をプレイしていて最も脳内麻薬が分泌される瞬間、それは間違いなくトラックへの積み込み作業だ。
限られた荷台スペースに、大小様々な形状の段ボールや家具をいかに効率よく、隙間なく詰め込むか。これは完全に高度な「3Dテトリス」である。「この隙間に電子レンジの箱がいけるか…? いや、先にタンスを奥に入れて土台を作るべきか…」と試行錯誤を繰り返し、最後のピースがピタリとハマった時の達成感たるや、筆舌に尽くしがたい。
きれいに積み上がった荷台を満足げに眺めて一服する(ゲーム内にタバコはないが、気分的には完全にそれだ)。これぞ引っ越し屋の醍醐味だろう。逆に、適当に積んだ結果、運転中のカーブで荷崩れの音が聞こえた時の絶望感も、また本作の味わい深いスパイスとなっている。
サクッと働いて、サクッと稼ぐ。900円で味わう濃密な労働

本作のプレイボリュームは、全ミッションを通して約4時間程度と、この手のシミュレーターゲームにしては非常にコンパクトにまとまっている。これを「物足りない」と感じるか、「週末にサクッとクリアできてちょうどいい」と感じるかはプレイヤー次第だろう。
個人的には、900円という手頃な価格設定を考えれば、このくらいの「濃縮された労働体験」は十分に満足できるものだった。ダラダラと似たような作業が続くよりも、多様なロケーションで発生する予期せぬハプニング(時折発生する奇妙な挙動バグも含めて)を楽しみながら、短期間で達成感を味わえる点が潔い。
粗削りな部分も確かに存在するが、それすらも笑って許せるような、愛すべきB級シミュレーターといった趣がある。面倒な引っ越し作業を、笑いと達成感に変えてくれる『Moving Simulator』。週末のちょっとした時間に、仮想世界の肉体労働でリフレッシュしてみてはいかがだろうか。
ゲーム概要
- タイトル: Moving Simulator
- ジャンル: シミュレーション
- 開発元: Corpix Games , PlayWay S.A.
- パブリッシャー: PlayWay S.A.
- 発売日: 2026年1月16日
- 価格: ¥900
- 日本語対応: 字幕対応
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/3525060/Moving_Simulator/







