いわゆる「Foddian」系と呼ばれるジャンルがある。壺に入った男がハンマーで山を登ったり、王様がジャンプだけで頂上を目指したりする、あの高難度アクションゲーム群だ。多くのプレイヤーがマウスを投げ、絶叫し、そしてなぜかまた挑んでしまう。
今回紹介する『Hack And Climb』もまた、その系譜に連なる作品だ。だが、本作には決定的な違いがある。プレイヤーは人間ではない。「斧」そのものだ。手足などない。あるのは刃と柄、そして物理演算のみ。
呪われし武器となり、奈落の底から地上を目指す。このシンプル極まりない設定と、驚くほど繊細な操作感が同居する本作について、実際にプレイした感触を交えてレビューをお届けする。
刃を食い込ませる「感触」がクセになる

本作のルールは単純明快だ。マウス操作で武器を振りかぶり、飛ばし、壁や地面に突き刺して登っていく。これだけである。しかし、実際に触れてみるとその奥深さに気づく。
武器には重心があり、回転がかかる。マウスをドラッグして投擲の軌道を予測するのだが、単に狙った場所に飛ばすだけでは不十分だ。「刃の部分」が壁に当たらなければ刺さらないからだ。柄が当たれば無情にも弾かれ、物理法則に従ってコロコロと奈落へ落ちていく。
この「回転」の制御が本作の肝であり、最大の魅力だ。空中で絶妙な回転を加え、狙い澄まして壁に「ザクッ」と刺さった瞬間のSEと振動。この快感がたまらない。最初は思うように動かせずもどかしい思いをするが、慣れてくると自分の手足のように(手足はないが)武器を操れるようになる。この成長曲線が非常に心地よい。
「死にゲー」だけど、慈悲はある

高難度プラットフォーマーといえば、一度のミスで数時間の努力が水泡に帰す理不尽さがつきものだ。本作も例外ではなく、ミスをすれば容赦なく落下する。
しかし、『Hack And Climb』は現代的な配慮も忘れていない。難易度設定やチェックポイント機能が充実しているのだ。「チェックポイントあり」に設定すれば、落下しても直前の安全地帯からやり直せる。これは、このジャンルに興味はあるが、心をへし折られるのが怖いプレイヤーにとって大きな救いだ。
もちろん、生粋のチャレンジャー向けに、チェックポイントなしの「男気設定」や、さらに過酷な高難易度モードも用意されている。初心者から熟練者まで、幅広い層が楽しめる設計になっている点は高く評価したい。
10種の武器がもたらす多様な攻略ルート

本作のユニークな点は、プレイヤーキャラクター(武器)を変更できることだ。ステージ各所に隠された武器をアンロックすることで、斧以外にも様々な形状の武器で登山が可能になる。
これが単なるスキンの変更ではないのが面白い。例えば、柄の長い武器、軽い短剣、あるいは鎖がついたモーニングスターのような武器。それぞれ重心や回転の挙動、当たり判定が全く異なる。
ある武器では難所だった場所が、別の武器ならあっさり越えられることもあるし、その逆もまた然り。武器を変えるだけで全く別のゲームを遊んでいるような感覚になり、リプレイ性が非常に高い。Steam Deckでの動作も快適で、トラックパッドを使った操作も推奨されているため、寝転がりながらの「修行」も可能だ。
総評:800円で買える極上の達成感

『Hack And Climb』は、一見するとシンプルな物理演算ゲームだが、その実、非常に丁寧に作られたアクションゲームだ。美しいピクセルアート、緊張感を高めるBGM、そして何より、プレイヤーのスキル向上を実感できるレベルデザインが秀逸である。
何度も落下し、何度も「もう辞めてやる」と思う瞬間はあるだろう。しかし、その苦しみを乗り越えて頂上に達した時の脳汁が出るような達成感は、何物にも代えがたい。
価格も手頃で、サクッと遊べる(クリアできるとは言っていない)本作。自分の精神力を試したいゲーマー諸氏は、ぜひこの呪われた登山に挑んでみてほしい。
ゲーム概要
- タイトル: Hack And Climb
- ジャンル: 物理演算ベース高難度アクションプラットフォーマー
- 開発/パブリッシャー: Kodachi Games
- 発売日: 2026年1月20日
- 価格: ¥800
- プラットフォーム: PC (Steam) ※Steam Deck完全対応
- 日本語対応: UI・字幕対応
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/3597060/Hack_And_Climb/







