「マイティ。ミーティー。マウリ。」この力強い響きだけで、何かが始まろうとしている予感がする。いや、正確には「何かとんでもないもの」に巻き込まれそうな予感だ。
本作『Mauri Mursu’s Odyssey』は、伝説的な巨体を持つセイウチ「マウリ」となり、ユーモアとカオスに満ちた世界を冒険するアクションRPGだ。開発はNervanti、パブリッシングはFennonautsが担当している。
一見すると子供向けの愛らしい動物アドベンチャーに見えるが、その皮(脂肪?)の下には、インターネット・ミームの文化と、少しばかりの狂気、そして開発者の「セイウチ愛」が詰まっている。実際にプレイしてみると、その独特な世界観に魅了されると同時に、インディーゲーム特有の荒削りな手触りに翻弄されることになった。
ただ一つ言えるのは、このゲームを終える頃には、あなたの理想のヒーロー像は「ムキムキの戦士」から「ヒゲの生えたセイウチ」に書き換えられているということだ。
2Dと3Dが交錯する、シュールで愛らしいビジュアル

ゲームを開始してまず目を引くのは、そのビジュアルスタイルだ。3Dで構築された奥行きのある環境の中を、2Dスプライトで描かれたマウリたちがペラペラと、しかし存在感たっぷりに動き回る。
この「飛び出す絵本」のようなスタイルは、視覚的に楽しいだけでなく、本作のコミカルな雰囲気を決定づけている。島々を巡り、奇妙な生き物たちと出会う旅は、まさにオデッセイ(長旅)。背景の美しさとキャラクターの脱力感のギャップが、なんとも言えない味わいを醸し出しているのだ。
操作性は「じゃじゃ馬」。コントローラーを握りしめろ

さて、ここからは少しゲーマーとしての本音を語ろう。このセイウチ、操縦するには少しコツがいる。
PCゲーマーとしてはキーボード&マウスで挑みたいところだったが、正直に言おう、それは「修行」に近い。デフォルトのキー割り当てや操作感は、かなりクセが強い。プレイを始めてすぐに、私は迷わずゲームパッド(コントローラー)を手に取った。
コントローラーに変えてからも、カメラワークは時折、独自の意志を持っているかのように暴れることがある。視点がぐるりと回って「おっと、そっちじゃない!」となることも。また、マップの隙間に挟まったり、世界の果て(Void)へ落下したりといった、ご愛嬌とも言えるバグに遭遇することもあった。
しかし不思議なことに、それらが致命的なストレスになるかといえば、そうでもない。「まあ、セイウチだしな……」という妙な納得感と、バグすらも笑いに変えるような全体のゆるい空気が、プレイヤーを許容させてしまうのだ。もちろん、今後のアップデートでの改善には大いに期待したいが、現状では「コントローラー必須」とだけ伝えておこう。
ユーモアとAIボイスが織りなす独特のナラティブ

ストーリーは、悪の教団(もちろんセイウチ絡みだ)から島を救うという王道のものだが、その語り口はネットミーム満載で非常に現代的だ。
特徴的なのは、キャラクターボイスにAI音声技術が多用されている点だ。人によっては好みが分かれる部分かもしれないが、この少し無機質で、でも妙に感情が乗っているようなAIボイスが、本作の「現実と非現実の狭間」のようなシュールさを加速させている。英語音声のみではあるが、そのトーンを聞いているだけで、なんとなく状況の馬鹿馬鹿しさが伝わってくるのが面白い。
子供も楽しめる見た目でありながら、テキストや展開には大人(特にネット文化に詳しい層)がニヤリとするネタが仕込まれている。このバランス感覚は絶妙だ。
総評:粗削りだが、愛さずにはいられない

『Mauri Mursu’s Odyssey』は、決して洗練されたAAAタイトルではない。操作性には難があり、バグも散見される。しかし、それを補って余りある「キャラクターの魅力」と「独自の世界観」がある。
脂肪を揺らしながら敵をなぎ倒し、理不尽な地形を乗り越え、訳のわからないジョークに包まれる体験。それは確かに、他では味わえない冒険だった。もしあなたが、少しばかりの不便さを笑って許せる寛容さと、セイウチへの憧れを持っているなら、このオデッセイに出発する価値は十分にある。
キバを研げ。ヒレを準備しろ。そして、バグの海を越えていけ。
ゲーム概要
- ゲームタイトル: Mauri Mursu’s Odyssey
- ジャンル: アクション / アドベンチャー / RPG
- 発売日: 2025年12月12日
- 価格: ¥ 1,700
- 開発元: Nervanti
- パブリッシャー: Fennonauts
- 日本語対応: なし
- プラットフォーム: PC (Steam)
- ストアURL: https://store.steampowered.com/app/3207480/Mauri_Mursus_Odyssey/






