1985年、ワシントン州。静寂に包まれたアッシュウッド・クリーク国立公園を舞台に、一台の無線機を手に「世界の境界線」を歩むアドベンチャーゲームが登場した。ソロデベロッパーKrystof Knesl氏が手掛けた『Radiolight』は、先行する名作『Firewatch』の情緒と、『Oxenfree』の超自然的な緊張感をブレンドした、珠玉のミステリー作品だ。
懐かしさと不気味さが同居する、1980年代の夜の森へ

物語は、地元の警察官イーサンとして、行方不明になった少年を捜索するところから始まる。 ゲームを開始してすぐに目を引くのは、スタイリッシュに表現された80年代のビジュアルだ。暗闇に浮かぶローポリゴンの木々、どこかノスタルジックな色彩。そして、カセットテープから流れるシンセウェーブのBGMが、プレイヤーを一瞬にして1985年の空気に引き込む。
だが、その「心地よい懐かしさ」は長くは続かない。 捜査が進むにつれ、ラジオからは奇妙なノイズが混じり始め、平和なはずの森のあちこちに、あってはならない「違和感」が姿を現す。
無線機のダイヤルに命を預ける、独特の緊張感

本作の核となるのは、手に持った無線機のチューニング操作だ。 周囲の不可解な現象や、異世界の信号、さらには「人ならざるもの」の気配を察知するために、マウスホイール(またはコントローラー)で周波数を合わせる。
実際にプレイしてみると、このアナログな操作が驚くほど没入感を高めてくれる。 真っ暗な森の中、カチカチと音を立ててダイヤルを回し、赤く光る正しい周波数を探り当てる瞬間。スピーカーから漏れ出る不気味な声やノイズが、背筋を凍らせる。 「戦闘」ではなく「通信」によって異形のものと対峙する、この静かな戦いは、従来のホラーゲームにはない独自の知的好奇心を刺激してくれた。
相棒との通信、そして孤独な決断

探索の頼りになるのは、警察署長ロバートとの通信だ。無線越しに聞こえる彼の声は、孤独な捜索活動における唯一の救い。だが、物語が深まるにつれ、その信頼さえも揺らぎ始める。
「一体、誰を信じればいいのか?」
森の奥深くで見つける古い文書や、かつての記憶の残響。断片的な手がかりをパズルのように組み合わせていく過程は、最高にスリリングだ。一部のキャラクター造形にインディーらしい個性を感じる場面もあったが、それもまた、この歪んだ町の一部であるかのように思えてくるから不思議だ。
結末の向こう側に残る、深い余韻

プレイ時間は約3〜5時間とコンパクトだが、その密度は極めて濃い。 謎がすべて解き明かされるわけではない。むしろ、解決しないからこそ消えない「しこり」のような恐怖が、エンディング後もしばらく胸に残る。
美しい夜景に癒やされていたはずが、次の瞬間には背後の物音に怯えている。そんな情緒不安定な体験を、ぜひヘッドホンを着用して味わってほしい。低音の響くサウンドデザインが、アッシュウッド・クリークの闇をより深く、より重く演出してくれるはずだ。

一人のクリエイターが情熱を込めて作り上げたこの不気味な「国立公園」には、足を運ぶ価値が十分にある。
ゲーム概要
- タイトル: Radiolight
- ジャンル: 1人称ミステリーアドベンチャー / ウォーキングシミュレーター
- 発売日: 2025年10月23日
- 価格: 1,700円
- 開発元: Krystof Knesl
- パブリッシャー: Iceberg Interactive
- 対応プラットフォーム: PC (Steam)
- 特徴:
- 1980年代の雰囲気を再現した美しいローポリゴン・グラフィック。
- 無線機の周波数を合わせることで謎を解き、物語を進める独自のギミック。
- 国立公園を舞台にした、超自然的な要素を含むスリリングなシナリオ。
- ジャンプスケア(ビックリ要素)に頼らない、重厚な雰囲気重視のホラー体験。
- ストアリンク: Steamストアページ







