南仏の柔らかな木漏れ日の中、泥んこになって駆け回る一匹の赤ちゃんイノシシ。その鼻先には、家族へと続く「匂い」の道筋が見えていた。
今回は、2026年4月30日にリリースされた『アドラブル・アドベンチャー』をレビューする。本作は、山火事で家族と離れ離れになってしまった赤ちゃんイノシシの「ボリス」となり、大自然を探索する三人称視点の探検アドベンチャーだ。
嗅覚で世界を「視る」という斬新な体験

本作の最大の特徴は、イノシシならではの「嗅覚」をゲームデザインの核に置いている点だ。プレイヤーはボリスの鼻を使い、空気中に漂う匂いの粒子を特定し、その痕跡を辿っていくことになる。
最初は無数の匂いに惑わされるが、特定の植物や対象を繰り返し嗅ぐことで、その匂いを「学習」し、フィルターにかけて除外できるようになる。このシステムが秀逸で、複雑な森の中でも次第に目的の匂い――兄弟や姉妹の残り香――を鮮明に捉えられるようになっていく感覚は、まるで本物の野生動物になったかのような没入感を与えてくれる。
美しきセヴェンヌ国立公園を五感で楽しむ

舞台となるのは、南仏のセヴェンヌ国立公園をモデルにしたオープンなフィールドだ。草原のそよ風、洞窟の湿った空気、そして山地の厳しい岩肌。Unreal Engineで描かれる世界は非常に美しく、環境音の作り込みも相まって、ただ歩いているだけで心が洗われる。
ボリスのアニメーションもまた、言葉を失うほど愛らしい。全力で走り、 virage(コーナー)で不器用にドリフトし、冷たい川を見つければ水浴びを楽しむ。その一挙手一投足がプレイヤーの保護欲を激しく刺激する。もう、そこにいるだけで100点満点をあげたくなってしまうほどだ。
家族との絆と、自然へのメッセージ

物語は、森林保護官マクシムの温かいナレーション(フルボイス)と共に進む。ボリスは旅の途中で、個性豊かな兄弟たちと再会していく。各兄弟とのエピソードにはパズル要素があり、彼らを説得して家族の輪に戻していく過程は非常に心温まる。
また、本作の背景には「山火事」というシビアな環境問題も存在する。しかし、説教臭さは一切ない。ボリスの目線を通じて自然の再生と家族の絆を描くことで、プレイヤーの心に自然と大切なメッセージを残してくれる。ラストシーンの家族の再会には、思わず目頭が熱くなってしまった。
短くも濃密な「心の洗濯」の時間

メインストーリー自体は3時間程度とコンパクトだが、世界には写真撮影やタイムトライアル、ゴミ拾いといった寄り道要素が溢れている。技術的な面で、稀に地形に挟まるような挙動も見受けられたが、開発陣の迅速なアップデートへの姿勢は好感が持てる。
「最近、少し疲れているな」と感じるすべてのプレイヤーに、この鼻先の冒険を推奨したい。ボリスと一緒に泥にまみれ、花の匂いを嗅ぎ、広い空の下を駆ける。それだけで、明日も少し頑張れるような気がしてくる。そんな魔法のような一作だ。
ゲーム概要
- タイトル: アドラブル・アドベンチャー(Adorable Adventures)
- ジャンル: 三人称視点癒やし系探検アドベンチャー
- 発売日: 2026年4月30日
- 開発元: Wild Sheep Studio
- パブリッシャー: PQube
- 価格: 3,200円
- 対応言語: 日本語字幕対応
- 主な特徴:
- 赤ちゃんイノシシ「ボリス」による嗅覚を活用した探索システム
- 南仏セヴェンヌ国立公園にインスパイアされた美しいオープンフィールド
- 家族との再会を描く心温まるストーリーとフルボイスナレーション
- キャラクターのカスタマイズやミニゲームなどの豊富なサイドコンテンツ
- ストアリンク: Steam:アドラブル・アドベンチャー







