かつて子供たちの笑顔であふれていた場所が、時を経て不気味な廃墟へと変貌を遂げる――。そんなマスコットホラーの王道でありながら、既存の作品とは一線を画す強烈な個性を放つインディーズタイトルが登場した。それがSkunx Gamesの手掛ける『Dark Pals: The 1st Floor』だ。
プレイヤーは、放棄され記憶の底に埋もれていた精神療養施設「アップワード」へと足を踏み入れる。手にあるのは、環境に干渉できる特殊な玩具「インクブラスター」のみ。カラフルでありながらどこか狂気を孕んだ施設のマスコットたちが徘徊するなか、仕掛けられたパズルを解き明かし、この施設が隠す「自分自身に関する真実」へと迫っていく。
本作の雰囲気を象徴する公式映像が公開されているので、まずはその目で不気味な世界観を確認してほしい。
抜群のビジュアルセンスと、耳にこびりつく「ギャップ」の恐怖

実際に本作のファーストフロアへと足を踏み入れて驚かされたのは、その卓越したアニメーションとアートスタイルの質の高さだ。静まり返った施設内に響き渡る、キャッチーでありながらどこか耳障りなBGM。そして、明るい原色で彩られたポップな内装が、暗闇と混ざり合うことで強烈な「不気味の谷」を作り出している。
何より、本作を唯一無二の存在にしているのが、施設内で遭遇するマスコットたちのデザインだ。巨大な頭部に凶悪な牙を持つ犬型の「チョンピー・チェイシー」や、影に潜む「ブリンキー・ドリンキー」など、一見すると愛らしいキャラクターたちが、内にドス黒い闇を抱えて迫ってくる。
このグラフィックと演出のクオリティが非常に高く、ゲームを起動してから一気にその世界観に引き込まれてしまった。
常識を揺るがすパズルと、理不尽さを抑えた絶妙なチェイス

ゲームプレイの核となるのは、インクブラスターを用いた環境パズルだ。部屋のレイアウトそのものが変化するようなギミックもあり、こちらの固定観念や自衛本能を逆手にとった謎解きが展開される。じっくりと観察すれば解を導き出せる絶妙な難易度になっており、パズルを解いた瞬間の快感はひとしおだ。一部、映画館や図書室のシチュエーションなど、少し頭をひねるポイントもあるが、それが心地よい緊張感を生んでいる。
また、ホラーゲームにありがちな「理不尽な初見殺しチェイス」が比較的抑えられている点も好印象だ。恐怖に怯えてただ逃げ回るだけでなく、敵の動きやダイナミックな演出をプレイヤーがしっかりと視認できる余裕を持たせた設計になっている。スリルに満ちた追跡劇でありながら、理不尽に何度も死に続けるストレスが少ないため、ホラー初心者でもコントローラーを投げ出さずに没頭できるだろう。
……ただ、終盤に待ち受ける息をもつかせぬ連続チェイスだけは、私の心臓を本気で止めにかかってきた!あの緊張感は、文字通りモニターに向かって叫びたくなるほどエモーショナルな体験だったと言わざるを得ない。
キャッチーな楽曲がもたらす最高の没入感

そして、本作を語る上で絶対に外せないのが、作中で流れる特定の「楽曲」の存在だ。特にクッキーを焼くパズルセクションで流れるコミカルな歌は、一度聴いたら最後、脳内で無限ループすること必至の破壊力を持っている。恐怖のどん底に落とされたかと思えば、妙にゴキゲンな音楽に合わせて作業をさせられる。このシュールで奇妙な緩急のつけ方こそが、本作の持つ独自の魅力であり、海外のコミュニティや実況者の間で爆発的な話題を呼んでいるのもうなずける。
1~2時間程度でクリアできるコンパクトなボリュームの中に、濃密なロア(背景設定)と、映画的な演出がこれでもかと詰め込まれている。プレイを終えた今、早くも次のフロア(続編)が待ちきれない。低価格でありながら、グラフィック、音楽、演出のすべてにおいて、ジャンルの新たな金字塔になり得るポテンシャルを秘めた珠玉の1本だ。
ゲーム概要
- タイトル:Dark Pals: The 1st Floor
- ジャンル:マスコットホラー / パズルアドベンチャー
- 開発元 / パブリッシャー:Skunx Games
- 発売日:2026年5月1日
- 価格:867円
- 対応言語:日本語字幕対応
- プラットフォーム:PC (Steam)
- ストアページ:Steamストアリンク






