一歩足を踏み入れた瞬間、そこは私たちがよく知るきらびやかなゲームの世界ではなく、文字通り「崩壊」の始まったバグの迷宮だった――。
本作は、プログラムのバグというJRPGでは本来「あってはならない不具合」を主軸に据え、現実世界の謎解きとゲーム世界の脱出劇を融合させた、極めて野心的で尖ったサスペンスホラーRPGだ。美しいビジュアルの裏に潜む容赦のない展開と、既存のターン制バトルの枠組みを破壊するトリッキーなゲームシステムが、プレイヤーの心を否応なしに掴んで離さない。
画面の「内」と「外」から迫る、息をのむ緊迫のデュアルザッピングストーリー

物語は、失踪したはずのゲームディレクターが、開発中止になったはずの仮想現実MMORPGの世界に閉じ込められているという衝撃的な発覚から幕を開ける。プレイヤーは、ゲーム内の取り残されたヒロインを操作して命がけのログアウトを目指すパートと、現実世界からプログラムを解析して彼女をサポートするプログラマーの視点を交互に行き来することになる。
この「ゲームの内側」と「現実世界の捜査」という2つの視点が絡み合う構造が実に見事だ。片方で得たヒントが、もう片方の世界の道を切り開く鍵となり、プレイヤー自身が本当にシステムをハッキングしながら未解決事件の核心へ迫っていくかのような、強い没入感を味わえる。全編に漂う、いつどこで足元をすくわれるか分からないオカルトとサイエンスが混ざり合ったサスペンスの空気感は抜群で、次の展開が気になってコントローラーを置くタイミングを見失うほどだ。
敵をビリヤードのように弾き飛ばす爽快感と、ジャンルを書き換える独自の戦略バトル

本作を唯一無二の存在に押し上げているのが、非常に独創的な戦闘システムだ。一見するとオーソドックスなターン制のコマンドバトルなのだが、その実態はフィールドを縦横無尽に駆け巡る「位置取りの格闘技」である。
特に、攻撃のコンボを繋いで敵を文字通りフィールドの果てまで吹き飛ばすシステムが素晴らしい。吹き飛ばした敵が壁や他の敵、さらには味方キャラクターに衝突することで、ピンボールのように連鎖的な大ダメージを叩き出す。この位置調整と角度の計算がピタリとハマり、敵が一網打尽になった瞬間の爽快感は格別だ。
さらに熱いのが、現実世界からのハッキングによって、戦闘中にゲームの「ジャンルそのもの」をシューティングや格闘ゲームへと一時的に変貌させるシステム。そして、あえてフィールド上のバグに触れて汚染度を高めることで、圧倒的な火力を得る代わりに常に即死の危険と隣り合わせになる、リスクとリターンが極限まで尖った変身モード。これらの要素が絡み合い、一手一手の選択がバトルの趨勢をダイナミックに変えていくスリルを提供してくれる。
プレイヤーの覚悟を試す、絶望と背中合わせの「一歩の重み」

美しく魅力的なキャラクターデザインとは裏腹に、本作の底流にあるのは、どこまでも容赦のない、冷徹なまでのダークファンタジーと心理的ホラーだ。世界の崩壊を体現するかのような異形の怪物たち、そして少し選択を誤れば即座に最悪の結末へと叩き落とされるシビアな罠が随所に仕掛けられている。
その緊張感はかなりのものだが、本作の面白いところは、その「失敗(バッドエンド)」さえも世界の謎を解き明かすピースや強力な恩恵として蓄積されていくシステムになっている点だ。理不尽とも思える世界の悪意を乗り越え、不確実な選択肢の中から細い蜘蛛の糸のような正解を手繰り寄せ、ついに真実へと到達した時のカタルシスは、何物にも代えがたい。
荒削りで尖った部分や、時にプレイヤーの想定を超える急激な難度の変化、セーブのタイミングに神経を使う緊迫した場面もある。しかし、そうした「一筋縄ではいかない不安定さ」すらも、バグに侵食された世界というテーマに完璧にシンクロしているように感じられる。万人向けの無難なRPGに飽き飽きしている人、強烈な個性を放つストーリーに溺れたい人には、これ以上ない刺激的な体験となるはずだ。

ゲーム概要
- タイトル: デス エンド リクエスト(Death end re;Quest)
- ジャンル: サスペンスホラーRPG / 乱入型アクションRPG
- 開発元: Idea Factory , Compile Heart
- パブリッシャー: Idea Factory International
- 発売日: 2019年5月16日
- 価格: ¥ 3,400
- 言語対応: 日本語フル対応(ボイス・テキスト完全対応)
- ストアリンク: Steam ストアページ






