かつて、私たちは「ウォーリー」を探すために目を皿のようにして絵本にかじりついたものだ。あの、見つけた瞬間の脳内に走る報酬系のアドレナリン。それを現代のゲーム体験として、最高にキュートかつダイナミックに昇華させたタイトルが登場した。それが、Bit Egg Inc.が手掛ける『Lost and Found Co.』だ。
まずは、その活き活きとした世界観を映像で確認してほしい。
元アヒルと女神の「ゆるすぎる」スタートアップ

本作の主人公は、もともとはごく普通のアヒルだった「ダッキー」。ひょんなことから人間の姿(といってもアヒルの面影が色濃いキュートな姿だが)に変えられてしまった彼は、没落した女神「メイ」が立ち上げた探し物専門のスタートアップ企業で働くことになる。
ストーリーの導入は非常にコミカルで、キャラクター同士の掛け合いも軽妙だ。日本語未対応(2026年3月現在)ではあるものの、ビジュアルの表現力が極めて高いため、何が起きているかは直感的に理解できる。女神でありながらスマホをいじってダラダラするメイの仕草や、健気に動くダッキーのモーションを見ているだけで、自然と口角が上がってしまう。
画面の隅々まで「命」が宿る圧倒的な密度

プレイを始めてまず驚かされるのは、その圧倒的な描き込み量だ。単なる静止画から探し出す「間違い探し」とは一線を画す。
このゲームのマップは、生きている。
家々の窓、街角のゴミ箱、通り過ぎる車——。目に映るほぼすべてのオブジェクトにインタラクトが可能で、クリックすれば箱が揺れ、車がクラクションを鳴らし、子供たちが笑いながら手を振ってくれる。探し物を見つけるためにクリックしているはずが、いつの間にか「このおじさんをクリックしたらどう動くんだろう?」と、世界を突っつくこと自体が目的になってしまう。この、触っているだけで楽しいという感覚は、良質なアドベンチャーゲームに不可欠な要素だ。
巧妙な「ヒント」が導く発見の快感

探し物自体の難易度は絶妙だ。時には「えっ、こんなところに!?」と叫びたくなるような場所に隠されていることもある。しかし、本作のガイドシステムが秀逸で、二段階のヒントが用意されている。
最初は抽象的なテキストで場所を示唆し、それでも分からない場合はより具体的な手がかりを提示してくれる。このテキストがまたウィットに富んでおり、「甘くて一口食べたくなりそう」というヒントからスイーツの屋台を連想させるといった、プレイヤーの想像力を刺激する作りになっているのが心憎い。
ただし、100%コンプリートを目指すとなると話は別だ。画面の隅々に隠された「靴下」や「水筒」をすべて見つけ出すには、かなりの観察力と忍耐、そして何より「健康な目」が求められる。あまりの没頭感に、気づけば数時間が経過しており、現実に戻った時にひどい眼精疲労に襲われる……それほどまでに中毒性が高い。
独自の温もりが詰まった傑作

本作は、タイのデベロッパーが手掛けたこともあり、日本、中国、タイといったアジア圏の文化が混ざり合った独特の無国籍なファンタジー世界が構築されている。どこか懐かしく、それでいて新しい。
随所に散りばめられたポップカルチャーへのオマージュや隠し要素を探す楽しみもあり、単なる「カジュアルな探し物ゲーム」の枠に収まらないボリュームと情熱を感じさせる。拠点となる事務所のカスタマイズ要素も、冒険の合間の良い息抜きになるだろう。
忙しい日常に疲れ、何も考えずに可愛い世界に浸りたい——そんな時に、この「失物招領有限公司」の門を叩いてみてほしい。元アヒルのダッキーと共に過ごす時間は、きっとあなたの心(と、もしかしたら視力以外のすべて)を癒やしてくれるはずだ。
ゲーム概要
- タイトル: Lost and Found Co.
- ジャンル: アイテム探しアドベンチャー
- 発売日: 2026年3月5日
- 価格: 2,000円
- 開発・販売: Bit Egg Inc.(パブリッシャー協力:Gamirror Games)
- プラットフォーム: PC(Steam)
- 主な特徴:
- 元アヒルのダッキーと女神メイが織りなすコミカルなストーリーモード。
- ほぼすべてのオブジェクトが動く、圧倒的な密度を誇るインタラクティブ・マップ。
- 全年齢対象で楽しめる、温かみのある手描きアートスタイル。
- 探索をサポートする、遊び心に溢れた二段階のヒントシステム。
- 事務所のカスタマイズや隠しチャレンジなど、やり込み要素も満載。
- ストアリンク: Steam:Lost and Found Co.







