2026年3月6日、突如としてSteamに放たれた一作のタイトルが、インディーゲーム界隈に静かな、しかし強烈な衝撃を与えている。その名は『Angel Engine』。
本作は、ネット上でカルト的な人気を博した同名のアナログホラー・ウェブシリーズを原作とした、一人称視点のホラー手術シミュレーターだ。プレイヤーは遥か未来の科学研究センター「バベル2」の新人インターンとなり、運び込まれる「被験体」の治療、あるいは改造に従事することになる。
絶望の未来で執刀する「手術」という名のアドレナリン体験

本作の舞台は、核戦争によって荒廃し、灰に包まれた絶望的な未来。唯一そびえ立つ「第2のバベルの塔」の中で、人類救済を掲げる科学者たちが「天使」の力を抽出するという、あまりにも不穏なプロジェクトが進行している。
ゲームの根幹は、ベルトコンベアのように運ばれてくる異形の被験体に対し、リモートアームを駆使して行う外科手術だ。手術と言っても、そこにあるのは高潔な医療行為ではなく、5種類のミニゲームを突破していくスリリングなタスク管理である。
メス(迷路)、レーザー(記憶力)、クランプ(回避)など、各ツールに応じたミニゲームは直感的ながらも、常に「時間」という名の死神に追われる。被験体の麻酔が切れれば、待っているのは凄惨な報い。このギリギリの緊張感が、プレイヤーの心拍数を否応なしに跳ね上げる。
崩壊する日常と、背後に迫る「何か」の気配

特筆すべきは、単なる作業ゲーに留まらないマルチタスクの狂気だ。手術に集中している間にも、老朽化した設備は容赦なく悲鳴を上げる。
システムの過熱を抑えるために冷却作業を行い、ヒューズが飛べば即座に交換しなければならない。時には手回し発電機を必死に回し、酸素供給を維持する必要すらある。この「執刀しながらの修理」というドタバタ感が、パニックホラーとしての純度を極限まで高めている。
ふと振り返ると、暗闇の中に何かがいるのではないか。そんな静かな恐怖が常に付きまとう。本作には「後ろを振り返る」専用のボタンが用意されており、それが何を意味するかは……実際にプレイして確かめてほしい。
暴かれる秘密と、深まる「天使」の謎

作業の合間に、かつてここで働いていた職員たちのメールを盗み見る要素も忘れてはならない。断片的に語られる日誌や内部通報は、この施設で行われていることの異常性を浮き彫りにしていく。
「死体が動いた」「彼らは私を騙した」――そんな不穏なワードが並ぶ中、プレイヤーは自身が何のためにこの場にいるのかを問い直すことになる。原作ファンにはたまらないロア(背景設定)の補完もありつつ、未視聴のプレイヤーをもその異様な世界観に引き込むパワーに満ちている。
正直なところ、後半の難易度は「マゾヒスティック」と言えるほど高い。しかし、すべてが完璧に噛み合い、死の淵で手術を完遂した瞬間に押し寄せるドーパミンは、他のホラーゲームでは味わえない中毒性がある。
総評:邪典的な魅力に満ちた、今期最注目の一作

『Angel Engine』は、単なるジャンプスケア(びっくり要素)に頼るホラーではない。極限状態でのリソース管理と、ザラついたレトロなビジュアル、そして倫理観を揺さぶる設定が融合した、極めて完成度の高い「ストレス・シミュレーター」だ。
わずか920円という価格で、これほどまでに濃密な恐怖と達成感を味わえる体験は稀だ。心臓に自信があり、マルチタスクの地獄を生き抜く覚悟があるなら、ぜひバベル2の門を叩いてみてほしい。ただし、引き出しの中の「聖水」を使うタイミングだけは、間違えないように。
ゲーム概要
- タイトル: Angel Engine
- ジャンル: ホラー手術シミュレーター
- 発売日: 2026年3月6日
- 価格: 920円(税込)
- 開発元: HMS Studios, Black Lantern Collective
- 対応言語: 日本語、英語、フランス語、中国語、他
- プラットフォーム: PC (Steam) ※Steam Deck検証済み
- ストアリンク: Steamストアページ







