絵本のように柔らかな色彩と、どこか懐かしい温もりを湛えた森。オランダのインディーデベロッパー・Enchanted Worksが手掛ける『不思議な林中漫遊(Nomori)』の第一印象は、ゆったりと散策を楽しむスローライフなアドベンチャーに見えるかもしれない。
しかし、足を踏み入れた途端、その先入観は心地よく覆される。本作の根底にあるのは、エッシャーのだまし絵を思わせる重力変換と、ポータルによる空間のねじれをフル活用した骨太な3D空間パズルだ。少女キコとなって四季の森を巡り、迷宮のような浮遊島を踏破していく本作の魅力と手触りを、実際のプレイフィールをもとにお届けする。
おばあちゃんの家から不思議な異界へ。四季が織りなす優しい世界観

物語は夏休み、おばあちゃんの家に滞在していた少女キコが、お使いで森へキノコ狩りに出かけるところから始まる。ひょんなことから迷い込んでしまったのは、現実の物理法則が通用しない精霊の世界「ノモリ」。
家に帰るため、キコはナビゲーターとなる白ウサギをはじめ、大きな山猫やタヌキの精霊たちと出会いながら、春夏秋冬を象徴する4つのエリアを巡ることになる。
グラフィックは低彩度で目に優しい絵本調の3Dアニメーションスタイル。秋の黄金色に輝く落ち葉、春の柔らかな光、静寂に包まれた冬景色など、各季節の景観が美しく描かれている。BGMも主張しすぎず穏やかで、思わず立ち止まって風車の回る景色を眺めたくなるような、豊かな情緒が漂っている。
天井が地面に変わる衝撃。ポータルと重力操作がもたらす唯一無二のパズル体験

本作最大の持ち味は、ステージ中に点在する円形ポータルを通じた「視点と重力の反転」だ。
ポータルをくぐると、身体の向きや重力の軸そのものが90度、あるいは180度変化する。さっきまで見上げていた垂直の崖や頭上の天井が、くぐり抜けた瞬間には平坦な足場へと早変わりするのだ。どこが進むべきルートなのか、どの向きから進入すれば目的の足場に立てるのか、頭の中で3次元の立体図面をくるくると回しながら考える感覚は極めて刺激的だ。
解法のひらめきが噛み合った瞬間、「そうか、ここが床になるのか!」と声が出るほどの爽快感がこみ上げてくる。
相棒の「うさぎキューブ」と解法の自由度

旅の心強い味方となるのが、ステージ内に配置されているウサギのような耳が生えた不思議なキューブだ。
このキューブは持ち運ぶことで足場にできるだけでなく、ポータルを通過させても「元の重力方向を保持する」というユニークな特性を持っている。異なる重力下へ持ち込むことで真横へ落下させたり、障害物を突き破る推進力として利用したりと、パズルの幅を大きく広げてくれる。
さらに面白いのは、解法がひとつに固定されていない点だ。制作者の想定解をなぞるだけでなく、キューブの配置やジャンプのタイミングを工夫することで、プレイヤー独自のルートを切り拓く余地が残されている。自分なりのアイデアで難所を突破できたときの達成感は格別だ。
プレイ時に意識しておきたいポイント

空間をダイナミックに回転させるシステム上、カメラの向きや重力が頻繁に切り替わるため、3D酔いしやすい体質の人は長時間の連続プレイを避け、こまめに休憩を挟むのが賢明だろう。
また、序盤のチュートリアルや進行ルートの誘導は控えめで、試行錯誤を通じてルールを学んでいく設計となっている。もっとも、チェックポイントは細かく配置されており、ボタンひとつで直前の状態に復帰できる親切な巻き戻し機能が備わっているため、落下や失敗を恐れずにじっくり挑戦できる環境は整っている。
こんなプレイヤーにオススメ

- 空間認識力を試される立体パズルが好きな人『Portal』シリーズや重力操作パズルのように、固定観念を崩して空間を把握する面白さに惹かれるプレイヤーにはたまらない仕上がり。
- 温かいビジュアルに包まれながら思考に没頭したい人敵との慌ただしい戦闘や厳しい制限時間はなく、自分のペースでじっくりと知恵を絞る時間を楽しめる。
- 自由な発想や試行錯誤が好きな人用意された一本道をたどるだけでなく、ギミックを柔軟に組み合わせて自分だけの解法を見つけ出したいクリエイティブなゲーマーにうってつけ。
ゲーム概要
- タイトル: 不思議な林中漫遊(Nomori)
- 発売日: 2026年9月23日
- 開発元: Enchanted Works
- パブリッシャー: Enchanted Works
- 価格: 1,380円(税込)
- ジャンル: 3Dプラットフォーム・パズルアドベンチャー
- 対応プラットフォーム: PC (Steam) / Xbox
- 言語対応: 日本語字幕対応
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