タクティカルRPGというジャンルにおいて、地形や高低差は常に重要な要素でした。しかし、本作『Never’s End』が提示するのは、それらを一歩踏み越えた「環境そのもののシミュレーション」です。Hypersectが手掛ける本作は、古典的なグリッド制戦闘に、物理演算的な魔法システムを融合させた非常に野心的な一作となっています。
3月8日に公開された体験版をプレイして見えてきたのは、美しくも残酷な世界の断片と、プレイヤーの知略を極限まで試す容赦のないゲームデザインでした。
魔法とは「現象」の操作である:温度が生み出す戦術的連鎖

本作の魔法システムは、他のRPGとは一線を画します。敵に直接火球を放つのではなく、指定した「空間の温度」を操作するのです。
例えば、ある地点の熱を奪って隣へ移動させるとどうなるか。熱を奪われた場所は凍りつき、熱を与えられた場所からは上昇気流が発生します。この気流は風となり、砂塵を巻き上げて敵の視界を奪い、あるいは崖っぷちに立つ敵を突き落とす――。
この「環境を武器にする」感覚は極めて新鮮。川を干上がらせたり、地形を溶岩に変えたりといった干渉も可能で、単なる数値の削り合いではない、ダイナミックな戦場操作が楽しめます。ベテランエンジニアによるサンドボックス的な設計思想が、タクティカルRPGという枠組みに見事に落とし込まれています。
突き放される快感:スタミナと時間のシビアな管理

戦闘システムは『ファイナルファンタジータクティクス』を彷彿とさせる親しみやすいクォータービューを採用していますが、その手触りは驚くほど硬派です。
特筆すべきは、スタミナと時間の概念。スタミナが続く限り1ターンに何度も行動できるため、一気に畳みかける爽快感がある一方、無計画な連続攻撃はすぐにリソースを枯渇させます。また、装備品には耐久値があり、睡眠等での修理ができないため、常に戦場での「使い捨て」と「買い替え」を迫られるマネジメント要素も効いています。
正直に言いましょう、序盤からかなり苦戦しました。しかし、重厚なピクセルアートと、Doseone氏によるエッジの効いたBGMが、この突き放されるような難易度を「心地よい緊張感」へと昇華させています。
覚悟を問うデモ版の洗礼

体験版の終盤、難易度は急上昇します。ここで本作の最も「尖った」仕様に直面することになります。全滅した際、直前からのリトライは許されず、デモの最初――約45分間の進行が、一瞬で無に帰すのです。
現代の親切なゲーム設計に慣れた身には、この仕様はあまりに苛烈に感じられるかもしれません。だが、これは「死と再生」を繰り返す本作の世界観、そして「村人の魂を消費して武器にする」というダークなテーマ性と表裏一体です。一手一手に命の重さを感じる、このヒリついた緊張感こそが、本作が目指す独自のゲーム体験なのだろうと確信させられます。
総評:荒削りだが、間違いなく「化ける」一作

『Never’s End』は、万人向けとは言い難いかもしれません。しかし、システムが噛み合った瞬間の爆発力と、環境を支配する全能感は、既存のRPGでは味わえないものです。
開発チームの豪華な顔ぶれが示す通り、アート、サウンド、システムが高い次元で融合しています。製品版までにバランス調整が入る可能性はありますが、この「尖り」こそがインディーゲームの醍醐味。タクティカルRPGに飢えているプレイヤーなら、この過酷な洗礼を受ける価値は十分にあります。
ゲーム概要
- タイトル: Never’s End
- ジャンル: タクティカルRPG / 環境シミュレーション
- 開発元・パブリッシャー: Hypersect
- 対応プラットフォーム: PC (Steam), PlayStation 5
- リリース日: 未定(体験版配信中)
- 言語対応: 日本語(字幕)、英語、他全10言語
- 特徴:
- 熱力学に基づいた独自の「環境魔法」システム
- 3Dピクセルアートによる美麗なグラフィックス
- スタミナ制による自由度の高い連続行動バトル
- 装備の耐久概念やシビアな全滅ペナルティ
- ストアリンク: Never’s End





